2009 Fiscal Year Annual Research Report
進化シミュレーションによるライセンシング・ネットワークの研究
Project/Area Number |
21530351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 伸夫 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 教授 (30171507)
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Keywords | ライセンシング / 技術コミュニティ / マルチエージェント・シミュレーション / 組織力 / 組織化 / 文化変容 / 分離志向 / 同化志向 |
Research Abstract |
ライセンシング・ネットワークは、単なる特許等知的財産権の使用許諾のネットワークを意味しているのではない。もっと広く、経済主体間のイノベーションのネットワーク、プロセスとしてとらえる必要がある。そこで今年度は、イノベーションが生起する技術コミュニティをその進化プロセスがどうなっているのか、そして組織化のプロセスはどのように進行するのかという観点から分析ならびに実際の調査データを使ったトレースを行なった。従来からの学説でも、技術展開の方向性が技術コミュニティの力学によって決まるということはいわれてきたが、今年度の研究では、それを一歩進め、その開発スピードも技術コミュニティの内部変化によって大きく変化することを説明するモデルを構築してみた。そのためには、技術コミュニティ内のサブコミュニティとして開発者コミュニティとユーザー・コミュニティを考え、この二つのサブコミュニティの文化をあるルールに則って脱ぎ替えることで、あるときには開発者コミュニティの一員として、あるときにはユーザー・コミュニティの一員として行動するオーディエンスが存在するというモデルを考える。このサブコミュニティ文化の脱ぎ替えルールとして、文化変容の領域で整理されてきた分離志向と同化志向を採用し、実際にそれをエージェントのルールとして組み込んだマルチエージェント型のコンピュータ・シミュレーション・モデルを構築した。さらに、将来的にコンピュータ・シミュレーションの予測精度を向上させるために、分離志向と同化志向の測定尺度も開発し、実際の調査データにより、その妥当性の検証を行なった。こうした分析は、「組織力」とは何かという、より根源的な問いに対するヒントももたらしてくれる。また実際の調査データを用いた組織活性化の状態をトレースする際にも、有益な視点となる。(765字)
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