2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本の経営支配権取引における少数株主保護の有効性に関する実証研究
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21530361
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 光太郎 慶應義塾大学, 大学院・経営管理研究科, 准教授 (90381904)
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Keywords | 経営財務 / M&A / 法とファイナンス / 少数株主利益 / ファミリービジネス |
Research Abstract |
平成22年は、第1の日本のTOBに関する研究については、論文"Controlling controlling shareholders in Japan"をアジアファイナンス学会で報告し、さらに分析の修正に取り組み、最終論文の作成を進めた。また、MBOにおける経営者と少数株主の利益相反に関する実証分析を行った論文「レックス・ホールディングス事件は何をもたらしたか」を旬刊商事法務に発表した。ここでは、レックス・ホールディングス事件に関して少数株主の主張を認めた2008年の東京高裁決定が、その後の時期にMBO取引を阻害していない一方で、株主保護につながっていることを示した。第2の日本のファミリービジネスに関する研究では、戦前から2000年までの百貨店業界における創業者一族の株主保有の変化および経営者交代と、資本調達、投資行動、収益性に関するパネルデータの作成を進めた。第3の各国における株主保護水準の違いがクロスボーダーM&Aの取引性格に与える影響の実証分析についても、データベースの構築と予備的分析を進めた。予備的分析により、M&Aターゲットとなる企業の所在国における株主保護水準がM&A取引における株式取得割合、支配プレミアムに影響を持つとの暫定的結果を得ている。第4に、企業の債務リストラクチャリングにおける経営者、銀行、株主の3者間の利益相反を分析した"Post-restructuring Performance in Japan"をPacific-Basin Finance Journalに掲載した。本論文では、問題企業に対する銀行のみの支援では再生が実現せず、新規の出資者を得て、経営者交代を伴うケースのみで再生可能性が高まることを示した。
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Research Products
(5 results)