Research Abstract |
本研究は「盆価値経営」に従来の目的経営の長所を取り込んだ「ハイブリッド型日本的経営」がいかなるものであるのかについて明らかにすることを目的とする。まずは先行研究を渉猟し,その中から,我々の方向性をある程度明らかにした上で,実際の日本企業の財務・会計担当者に向けてアンケートを行い,かつこれを補足するためにもインタビューをする計画を立てた。2010年度は2年目であり,アンケート項目を検討しこれを実施し,アンケート結果を分析した。さらにその分析結果を日本財務管理研究学会で報告し,この原稿を『年報財務管理研究』に投稿し,採択された。さらに研究を重ねた成果は,現在熊本学園大学大学院会計専門職大学院紀要に投稿中である。研究会は6月(アンケート項目検討),8月末(アンケート結果分析),10月(学会報告原稿検討)2月(アンケート結果のより深い分析)の4回行った。 明らかになったことは数多く,実り多い成果が得られた。アンケート結果を分析し,その結果をクラスタに分けると,概ね3つに別れることがわかった。株主を重視し,企業価値・株価を重視するようになっているクラスタ3の「ハイブリッド型日本的経営」の会社群が最多で,次いでクラスタ1の「日本的経営型」の会社群,クラスタ2の「独立独歩型」の3類型である。その行動様式は極めて興味深いことがわかった。クラスタ3の「ハイブリッド型日本的経営」の会社群でも,従業員と取引先については,クラスタ1の「日本的経営型」の会社群やクラスタ2の「従業員・取引先重視型」の会社群よりむしろ相対的に重視しているくらいである。さらに,このクラスタ3の企業群は,従来型の特徴である事業法人株主重視,メインバンク重視という特徴も兼ね備えており,この点でも,クラスタ1およびクラスタ2の会社群より重視度は高い。したがって,株主重視型へと一面的に移行しているわけではなく,バランスを取りながら経営を行っていると言える。 このような興味深い結果が得られたが,詳細はさらに分析をする必要がある。とりわけインタビューなどでなお深める必要があるというのが,現段階の認識である。
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