2009 Fiscal Year Annual Research Report
巨大企業進出によるものづくり企業ネットワークの生成モデルの構築
Project/Area Number |
21530374
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
安田 雪 Kansai University, 社会学部, 教授 (00267379)
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Keywords | ネットワーク / 産業集積 / ものづくり |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定地域への巨大企業進出により、地域に発生する「ものづくりネットワーク」の生成過程を調査・分析し、その波及効果を考察する新しいモデルを構築することである。 そのため、平成20年度に堺浜に建設されたS社液晶工場を中心に、企業関連のものづくりネットワークがいかに形成されていくのか、その動的変化の継続観察を行った。 具体的には現地の観察調査、自治体のかたがたへのヒアリング、商用データベースからの企業データの整理などを個別に進めている。 S市によるS社の工場誘致をめぐっては、大阪府S市と兵庫県H市とのあいだで激しい誘致競争が展開されたが、最終的にS市が誘致に成功している。この誘致成功の要因分析をヒアリング、現地調査などから行った。また、国内の企業誘致の成功事例(亀山、横浜、北九州)について資料分析を行い、類似点、相違点を検討した。同時に、企業誘致に関わる理論及び企業立地促進法に関する文献収集を進めた。また、S市についての地域特性、歴史、現状を理解するために、臨海部及び内陸部の訪問調査を継続的に行ない、臨海部及び内陸部の経済状況を確認している。21年度には市民の一部が企業誘致をめぐり訴訟を起こしたこともあり、経済波及効果の検討とともに社会的な影響力についての検討も行なう必要が生じた。 地域産業への波及効果については、当初予想したほどの大規模な効果がみられるのかについて疑問があがっている。観察中には、地域住民の進出に対する評価のゆれ、自治体の選挙結果と政策変更など社会的・政治的な不確定要因が多数、観察されたため、S社とその関連企業のみならず幅広い目配りをする必要が確認された。 当該地域にはスポーツ施設や関連企業などの誘致、建設が急速に進んでおり、臨海部のこうした発展と内陸部の経済発展がリンクするかの見極めが今後の研究の要である。
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