2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的責任企業のビジネスモデルに関する調査・事例研究
Project/Area Number |
21530386
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
高岡 伸行 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (90304922)
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Keywords | CSR / ビジネスモデル / BOPビジネス / ステークホルダーインヴォルヴェメント |
Research Abstract |
当該年度は主に,グローバルに展開する,既存の伝統的な巨大多国籍企業を社会的責任ビジネスの体現の一つと考えられているBOPビジネスの実践者に転換する,したがって社会的責任ビジネスの担い手に転換するための枠組みや方法を提唱している,スチュアート・ハートのサステナブル・バリュー・ポートフォリオ・マネジメントの考えを,CSR経営のあり方を示したものとして捉え,その論理,実現可能性などを検討し,研究論文にまとめ発表した。またその中で今後の研究を展開するにおいて有益となる2つの成果を得た。それらは(1)CSRを果たしつつ,企業利益の増大を図る,つまり企業利益とCSRとの合致した事業展開やそのマネジメントの方策を可能するシステムの特徴を見出した。さらにこれらの過程で,(2)CSR概念や理論の通説やその中の「当たり前」の危うさを指摘し得る照射軸を得た。 (1)は研究の目的である社会的責任企業のビジネスモデルの機能化のメカニズムの一つのパターンであり,前年度の成果であるその他の二つのパターンと合わせ,検討することで,社会的責任企業のビジネスモデルの機能化メカニズムとそれらを実際に機能させるCSR経営との闘連を考察する重要な要素になる。 また(2)は,CSR研究そのものをリデザインし得る手がかりとなる。これは社会的責任ビジネスの概念を確立する基盤となる。研究開始当初よりもその概念を精織化し,社会的責任ビジネスやそのメカニズムを比較,類型の精度を上げることに寄与すると考える。この(1)(2)の研究成果に共通する要素は寛容な資本と言われる「ペイシェントキャピタル」の存在である。これらは研究実施計画に記した,CSR遂行やCSR経営に与える所有構造の影響を考察する部分に該当する。 これらの成果は現段階では研究資料としてまとめることに留まっており,早急に具体的な研究論文や報告として発表し得るように努める。
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