2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530398
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
上野 恭裕 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30244669)
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Keywords | 伝統産業 / 事業システム / 堺打刄物 / シェフィールド / 柔軟な結びつき / ネットワーク / ゾーリンゲン |
Research Abstract |
この研究では堺打刄物をはじめとする伝統産業を研究対象として研究を進めてきた。特に長期的な競争優位を獲得している伝統産業は,単に集積を形成するたけでなく,リーダー企業を中心としたユニークなビジネス・システムを構築していることが分かってきた。今年度は特にイギリス,ドイツといったヨーロッパの伝統産業における複数企業へのインタビュー調査を行い,その国独特のユニークなビジネス・システムを明らかにすることを試みた。 日本では例えば堺の刄物産業において,問屋と呼ばれる卸業者が零細企業をまとめるコーディネータとしての役割を発揮し,製造工程を管理するといらビジネス・システムを構築してきたことがこれまでの研究で明らかとなってきた。しかしながらこれは地方,また国によって今く異なった発展形態を持っていることが明らかとなってきた。 イキリスのシェフィールドでは伝統産業の企業経営は,産業の成熟とともに縮小しており,企業倒産なども起こっているが,刄物師協同組合が地域社会に深く埋め込まれており,地域において重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。特にマスターカトラーという熟練工が社会的地位を獲得しており,産業だけでなく,地域社会の文化,生活,教育に深くかかわっていた。ただこのマスターカトラーは時代によりそのあり方を変化させ,最近でさ単なる熟練工ではなく,業界団体の代表として,政治的な役割を持つようになっていた。一方ドイツではこのような役割をコーディネータ的な大企業が担っており,その大企業は積極的な多角化を展開していた。 このようなコーディネータ的な企業・組織の役割が地域によってなぜ異なるのか,そのような企業が他の企業の戦略にどのように影響を与えるのか,そのメカニスムの解明が今後の研究課題である。
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Research Products
(1 results)