2009 Fiscal Year Annual Research Report
多国籍企業における社会化と多様性活用の両立可能性に関する研究
Project/Area Number |
21530401
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
金綱 基志 University of Nagasaki, 経済学部, 教授 (50298064)
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Keywords | 経営学 / 多国籍企業 / 知識移転 |
Research Abstract |
本研究は、黙知の国際移転に有効と考えられる社会化と、海外での文化的多様性の活用が両立可能であるかどうかという点を探究することを目的としている。 社会化とは、組織におけるコンテクストを形成することによる、個人の行動のコントロールと定義づけられる。また、この組織コンテクストは、共有された価値観と信頼関係という二つの次元から構成されているものと考えられる。こうした組織コンテクストの形成は、暗黙知を移転する際に重要な役割を果たしている(金綱,2009)。 一方で、こうした社会化は、違いに不寛容で、同質的なメンバーからなる集団を生みだすと考えられてきた(Hennart, 1993)。社会化と多様性を活用することは両立不可能であるのかどうかを検証することが本研究の目的である。 平成21年度は、まずこうした点に関する研究レビューを行った。例えば、信頼関係については、様々な視点からの研究が進められてきている。こうした研究のなかで注目すべきなのが、信頼関係が、知識の送り手の持つ知識に対する批判的思考を妨げる可能性があるとの研究である(Szulanski et al., 2004)。多国籍企業が、現地における多様性を活用するためには、現地でローカル独自の発想による知識が生み出されてくることが必要となる。もし、信頼関係が、受入側による批判的思考の形成を阻害する要因となっているとすれば、社会化によって現地における多様性の活用が妨げられるということになる。ただし、この点は、送り手のもつ知識に対する受容性と批判的思考のバランスの在り方を、知識移転の段階ごとにうまく変化させることで克服できる可能性がある。平成21年度は、上記の問題意識の下に、社会化と文化的多様性の活用の両立可能性を探究するための研究のフレームワークを作成した。
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