2010 Fiscal Year Annual Research Report
多国籍企業における社会化と多様性活用の両立可能性に関する研究
Project/Area Number |
21530401
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
金綱 基志 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (50298064)
|
Keywords | 経営学 / 多国籍企業 / 知識移転 |
Research Abstract |
平成22年度は、日本の多国籍企業において現地化を妨げている要因に関する分析を行った。 多国籍企業が進出先国での多様性を活用するためには、現地スタッフによる現地化を進める必要がある。しかし、これまで日本の多国籍企業においては、この現地化の遅れが問題とされてきた。こうした問題がなぜ生じてきたのかを、平成22年度は、知識の状況依存性、状況依存低知識の移転に必要となる二つの相互性の現地での再現可能性,及びその再現を困難にしている送り手のエキスパートと新参者としての二面性の問題から読み解いてきた。 知識が状況依存的であることは、様々な事例から確認できる。例えば、金型製造における仕上げ、ジグの製造、溶接加工、製造現場の改善などである。これらのケースで、過去の事例に関する知識が入手できたとしても、それをそのまま現在の問題の解決のために利用することはできない。このように知識が状況依存的な性質を持つことを前提とすると、知識を移転する際に、知識の受入側は,受け入れた知識をもとに,現在の状況下で機能する知識を発見するということが必要となる。 こうした状況依存的な知識の発見能力を向上させる上で,最も効果が高いと考えられるのが,直接的状況依存・対話型知識移転である。直接的状況依存・対話型知識移転とは、対話を通じた知識の送り手と受入側の相互関係と,受入側の知識と状況との直接的な相互作用という二つの相互性を伴う知識移転方法である。ただし、海外では、この二つの相互性の再現を、送り手=古参者という構造が逆転している状態で行わなければならない。このことが、現地化を困難としている要因と考えられる。この成果は、『アジア経営研究』第17号に掲載予定である。
|