2011 Fiscal Year Annual Research Report
多国籍企業における社会化と多様性活用の両立可能性に関する研究
Project/Area Number |
21530401
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
金綱 基志 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (50298064)
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Keywords | 経営学 / 多国籍企業 / 知識移転 |
Research Abstract |
文化的多様性の活用レベルは、ヒトの現地化の進展度合いとしてとらえることができる。これまで日本の多国籍企業に関する研究では、このヒトの現地化の遅れが問題とされてきた(吉原、1996;深尾他、2008)。ヒトの現地化が遅れているということは、現地の文化的多様性を活用しきれていないことを意味している。 本研究では、ヒトの現地化の遅れの理由を、知識の国際移転の困難性との関連で考察した。暗黙知を移転することには、様々な障害が伴う。その移転の困難性のために、現地の人材育成が遅れることがあれば、それが現地の人材の活用=多様性の活用の障害となっている可能性がある。暗黙知の移転(伝承)は国内でも容易ではないが、その国際移転はより困難であることが想定される。海外への暗黙知の移転は、国内とは異なる条件のもとで行わなければならないからである。この国内と海外の条件の相違を明確にし、それを克服するための政策的インプリケーションを導くことが、本研究の目的である。 本研究では、まず知識移転を以下の3つの方法に類型化した。(1)あるケースの事例を利用する方法。(2)状況依存的な知識をそのまま伝える方法。(3)対話を通じて協働で知識を創出する方法。上記の3つの方法のうち、暗黙知のような状況依存的な知識を移転する上で、最も効果が高いと考えられるのが、(3)の方法である。ただし、(3)の方法を実施する上での国内と海外の条件の相違となるのが、知識移転が行われる場への参加の在り方の違いである。知識移転が行われる場への参加は、国内の知識移転のケースでは、受入側が新参者であるのに対して、海外子会社への知識移転のケースでは、送り手が新参者になる。こうした相違を考慮すると、海外への知識移転を進め、現地化を進展させていくためには、送り手自身の徹底した現地化が必要であるという政策的なインプリケーションが導かれる。
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