2009 Fiscal Year Annual Research Report
電池開発をめぐる電機メーカーの環境戦略についての研究
Project/Area Number |
21530410
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
所 伸之 Nihon University, 商学部, 教授 (90237082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 充 日本大学, 商学部, 教授 (90366550)
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Keywords | 低炭素社会 / イノベーション / 競争優位 / パラダイム・シフト / 脱化石燃料 |
Research Abstract |
平成21年度は当該研究計画の初年度に当たり、研究実施計画のスケジュールに沿って文献収集とフィールド調査を進めた。このうちフィールド調査についでは当初計画していた8社への訪問調査が相手先企業の関係で3社しか実現できず、計画に狂いが生じたことは否めないが、パナソニック、京セラ、シャープという本研究課題を遂行する上で重要な企業を訪問し、インタビューを実施できたことは大きな成果であった。パナソニックは東京本社において、また京セラ、シャープは京都、奈良に出張しての調査であったが、3社とも2時間~3時間という十分な時間を割いて我々の質問に答えてくれた。特にシャープ葛城事業所では太陽光発電パネルのウェハー、モジュール等の現物を見学できたことは大変有意義であった。 我々は3社を訪問する前に担当者に質問票を送付しており、インタビューは質問票の質問項目に沿って進められた。質問内容に関しては、太陽電池、リチウム・イオン電池、燃料電池等の開発における現時点での日本企業の技術的な優位性をどう見ているか、中国、韓国等の外国企業とのコスト競争にどう立ち向かうのか、低炭素社会への移行という大きなパラダイム・シフトが進行しているなかでどのようなビジネス・モデルを構想しているのか等に関するものであった。回答に関して3社とも共通していた点は、自社の技術力に対して絶対的な自信を持っているという点である。太陽光発電パネルの開発に関して京セラ、シャープともにコストよりも変換効率へのこだわりが強いということも確認できた。その一方で、日本企業は要素技術へのこだわりが強すぎて、利益を稼げるビジネス・モデルを構想する力に欠けており、それが世界市場で苦戦する原因になっているのではないかという我々の疑問に対しては、3社ともそうした状況を概ね認めつつも明確な答えは得られなかった。やはり大企業になるほど体質を変えていくのは困難が伴うようである。 文献収集に関しては、「低炭素社会」「イノベーション」をキーワードにした国内外の著書、論文の収隻作業を行った。フィールド調査のデータを理論的に整理する際のロジックを得ることが文献サーベイの主たる目的であり、次年度も継続して粘り強く実施する予定である。
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