2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530437
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石田 成則 山口大学, 経済学部, 教授 (50232301)
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Keywords | 生命保険相互会社組織 / エージェンシー理論 / 費用選好仮説 / パネル・データ / コーポレート・ガバナンス / 委員会設置会社 |
Research Abstract |
1996年の保険業法の改正以降、継続的に保険規制は緩和され、保険行政の質的な転換が進んだ。また、その後の金融システム改革も含めて、業態間の参入障壁は引き下げられ、業務範囲規制も緩和されたことで、保険経営の自由度は高められた。しかし、こうした規制環境の変化にあっても、保険契約者に対するワンストップ・サービスのメリットは生かされていない。また、多角的な競争を通じた、業務の効率化と契約者への利益還元も十分とはいえない。 こうした要因のひとつとして、相互会社組織の問題を取り上げ、規制環境の変化が相互会社の経営行動に及ぼした影響を検証した。そのうえで、エージェンシー理論の枠組みを用いて、経営改革のための制度的仕組みを包括的に論じた。それには、相互会社におけるガバナンス改革、資金調達手段の多様化、そして持株相互会社への移行などが含まれる。そこでまず、公表されているデータを活用して、規制緩和により生命保険相互会社の経営行動がどのように変化したかを検証した。その結果、(1)パネル・データによる回帰分析結果からは、規制緩和の影響は検証されず、相互会社と株式会社を問わず、経営者の費用選好仮説が成立する可能性が高いことを指摘した。これは大手の保険会社が相互会社組織で営まれている帰結と考えられる。(2)一方で、既存の保険会社に労働生産性に伴う費用効率の上昇傾向がみられた。これは規制緩和のひとつの効果と想定される。(3)しかしながら、非効率の温床とされてきた販売面ではこうした影響はみられない。つまり、既存販売組織の効率化は遅れており、販売面での過剰投資は解消されていない。こうした実証結果を受けて、経営効率化への具体策を検討した。そのなかで、資金調達市場の構造変化に伴い他の金融機関や年金基金によるガバナンスが強化される可能性があることを指摘した。ただし、'こうした会社ガバナンスの強化も、経営者への牽制が上手く機能しないと絵に描いた餅になる危険性がある。そこで、内部組織でも委員会設置会社へ移行することの必要性を主張した。
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Research Products
(8 results)