2011 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレート・ガバナンスの視点と財務報告の質に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
21530469
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
椛田 龍三 大分大学, 経済学部, 教授 (60185965)
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 原価・実現主義 / 利益概念 / 時価主義 / 作成者(あるいは利用者)指向を重視した受託責任概念(目的) |
Research Abstract |
平成23年度は、コーポレート・ガバナンスと財務報告の質にとって、非常に重要な領域である会計目的論-特に受託責任目的-を中心に研究した。この会計目的としての受託責任概念(目的)を研究するためには、まず、これに関係すると思われる概念や領域を明らかにしなければならない。本研究では、この受託責任概念(目的)に関係する概念や領域として、資本主義的経営組織、組織論、所有と経営の分離、英国の荘園制度、複式簿記、原価主義、実現主義、費用配分の原則、費用収益対応の原則、収益費用観、分配可能利益、受託財産の運用責任(財産管理)、利益に関する財産の運用責任、利益計算、認識・測定(計算)、報告=開示=公開、真実性等および投資意思決定目的を念頭におきながら、特に米国の文献を中心につぎのような歴史的分析をした。本研究では、作成者指向を重視した受託責任と利用者指向を重視した受託責任を区別して-研究上の切り口にして-、第1にマックス・ウエーバーは、資本主義的経営には複式簿記は必要不可欠であるとし、リトルトンは、英国の受託責任原理が複式簿記に導入された-特質移転-ことを明らかにし、ペイトン=リトルトンは、受託責任概念(目的)に基づいた会計責任概念は最も重要であると指摘し、メイは受託責任を会計目的の1つに掲げ、岩田巌は、受託責任概念(目的)に基づく会計責任概念を財産管理-利益に関する財産管理-と位置づけていた。第2に1960年代以降の情報化社会になってくると、投資意思決定目的が主目的となりながらも、受託責任目的-作成者指向を重視したものから利用者指向を重視した受託責任概念(目的)へ変容するが-も継承される。第3にさらに2000年以降は、会計理論では、投資意思決定目的と利用者指向を重視した受託責任目的をともに、レーゾン・デートルとしていたが、会計制度を形成するための概念フレーム(IASB/FASB)では、投資意思決定目的のみを重視し、受託責任目的は後退している。以上の研究内容を「IFRS時代における受託責任概念(目的)の普遍妥当性」というタイトルで、会計理論学会第26回全国大会統一論題(北海道大学主催:平成24年9月23日、24日)で報告し、この内容は本年の秋に発行される会計理論学会誌に掲載予定である。
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Research Products
(1 results)