2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530471
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 和生 Nagoya City University, 大学院・経済学研究科, 教授 (30240279)
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Keywords | 退職給付会計 / 企業年金制度 / 報告利益管理 / 実証分析 / 確定拠出年金 / 期待運用収益 / 割引率 |
Research Abstract |
本研究の目的は、退職給付会計における経営者の裁量的な利益管理行動について包括的な分析を行うことである。退職給付会計は割引率、昇給率、期待運用収益率、会計基準変更時差異の償却年数、過去勤務債務の償却年数、数理計算上の差異の処理年数という多くの仮定をもとに行われており、非常に複雑な仕組みになっている。経営者はこれらについて意思決定を行うことによって、報告利益を調整して管理することができる。現在まで、割引率を中心として多くの研究が行われているが、特定の会計方法を個別に分析しており、包括的に分析した研究は日本でも海外でも行われていない。しかし、経営者は全体をみて意思決定しており、ある特定の会計方法に限定した場合、その行動を検出することはできないこともある。また、経営者は複数の方法をどのように利用しているのか、補完的か代替的かといった会計方法間の関係は包括的な分析を行うことによって初めて明らかになる。 今年度は、退職給付会計の中でわが国では分析が少ない期待運用収益率に焦点をあてて、経営者の裁量行動について分析した。その結果については下記論文(『會計』)にて公表している。その内容は以下の通りである。2001年度から2005年度までを分析した結果、過去5年間の長期運用実績が期待運用収益率の選択と変更に関する経営者の意思決定に影響を与えていることが判明した。また、業績の良くない企業ほど高い期待運用収益率を選択しており裁量的会計行動が確認できるが、その変更については、前年度の利益率を業績目標とした場合を除いて、業績との間に明確な関係は得られなかった。 この結果は、期待運用収益率に関する経営者の裁量行動は限定的であり、ほかの退職給付会計の選択肢、特に割引率との関係を分析する必要性を示しており、来年度以降の課題としてあげられる。
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Research Products
(2 results)