2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530471
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 和生 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30240279)
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Keywords | 退職給付会計 / 企業年金制度 / 報告利益管理 / 実証分析 / 確定拠出年金 / 期待運用収益 / 割引率 |
Research Abstract |
本研究の目的は、退職給付会計における経営者の裁量的な利益管理行動について包括的な分析を行うことである。退職給付会計は割引率、昇給率、期待運用収益率、会計基準変更時差異の償却年数、過去勤務債務の償却年数、数理計算上の差異の処理年数という多くの仮定をもとに行われており、非常に複雑な仕組みになっている。経営者はこれらについて意思決定を行うことによって、報告利益を調整して管理することができる。現在まで、割引率を中心として多くの研究が行われているが、特定の会計方法を個別に分析しており、包括的に分析した研究は日本でも海外でも行われていない。しかし、経営者は全体をみて意思決定しており、ある特定の会計方法に限定した場合、その行動を検出することはできないこともある。また、経営者は複数の方法をどのように利用しているのか、補完的か代替的かといった会計方法間の関係は包括的な分析を行うことによって初めて明らかになる。 昨年度は、退職給付会計の中でわが国では分析が少ない期待運用収益率に焦点をあてて、経営者の裁量行動について分析した。そして、今年度は、期待運用収益率と割引率との関係について分析した。2001年度から2005年度までを分析した結果、期待運用収益率と割引率との相関係数は0.383であり、正の関係があることが明らかとなった。また、経常利益率、負債比率、年金資産比率をコントロール変数として多変量回帰分析を行ったところ、いずれも正の係数をもち、そして高いt値(8.095、7.854)が析出されている。この結果、この両者の間には、強い正の関係があることが確認され、経営者はこの2つの会計方法を補完的に利用していると推測される。しかし、その因果関係、あるいは優先順位などについては解明されておらず、今後の分析課題として残っている。
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Research Products
(1 results)