2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530471
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 和生 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30240279)
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Keywords | 退職給付会計 / 報告利益管理 / 複数の会計選択 / Jonesモデル / 実証分析 / 裁量的発生高 |
Research Abstract |
退職給付会計は割引率、期待運用収益率、各種の償却年数という多くの仮定をもとに行われており、非常に複雑な仕組みになっている。経営者はこれらについて意思決定を行うことによって、報告利益を調整することができる。現在まで割引率を中心として多くの研究が行われているが、特定の会計方法を個別に分析しており、包括的に分析した研究は日本でも海外でも行われていない。本研究では退職給付会計に関する会計選択を全て取り上げて、経営者の報告利益管理行動について包括的に分析した。 本研究の分析は次の方法によって実施した。まず、退職給付費用を各項目に分解し、勤務費用、利子費用、期待運用収益、過去勤務債務の償却費用、数理計算上差異の償却費用、会計基準変更時差異の償却費用の各々について裁量部分を測定した。これは年度別平均値をベースに非裁量部分を測定することによって行った。次に、全体の裁量的発生高を測定するため、Jones型モデルに退職給付変数を追加した修正モデルを新しく開発した。この修正モデルを使って裁量的発生高を測定して、個々の裁量的退職給付費用との関係を分析した。なお、分析サンプルは東証1部に上場している3月決算企業で、2002年3月期から2010年3月期までを対象とした。 分析の結果、会計基準変更時差異による裁量が最も大きく、報告利益管理の中心であったことが明らかとなった。また、業績が良い企業ほど、規模が大きい企業ほど、裁量的退職給付費用は大きく、先行研究で議論されている予想に整合していた。さらに、Jones型モデルによる全体の裁量的発生高との関係を分析した結果、退職給付費用の各項目も関連しており、退職給付会計情報を追加することによって関連する報告利益管理行動を抽出できることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)