2011 Fiscal Year Annual Research Report
企業集団の財務報告基準の理論的整合性と実務適用可能性
Project/Area Number |
21530484
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
向 伊知郎 愛知学院大学, 経営学部, 教授 (20308761)
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Keywords | 企業集団財務報告 / 報告実体 / 支配概念 / 利益の質 / 価値関連性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、企業集団の財務報告基準に関連して、基礎理論との矛盾および企業実務の実態における問題から、現在進められている会計基準の国際的収斂が妥協の産物と化しているか、また基礎理論との整合性および企業実務への適用可能性の両方のバランスをとりながら会計基準を設定することが、投資者の意思決定に有用な情報提供に資することになることかについて検討することにあった。研究対象は、日本をはじめ、すでに国際財務報告基準(IFRSs)を採用しているオーストラリアおよびヨーロッパ連合(EU)諸国における企業集団の財務報告である。 平成21年度には、国際会計基準審議会(IASB)の企業集団財務報告基準が原則主義に基づいて規定されていることについて、支配概念およびのれんの会計基準に焦点を当てて、原則主義が会計実務における経営者の裁量を介入させる余地がある点について検討した。平成22年度には、企業集団財務報告基準における支配概念について、IASBの概念フレームワークについて検討し、IASBの支配概念が連結の範囲の決定において、経営者の裁量を介入させる余地がある点を指摘した。平成23年度には、IASBの概念フレームワークについて、国際会計研究学会の研究グループ中間報告書としてまとめあげ、かつIASBの企業集団財務報告基準採用がオーストラリアおよびEU諸国における連結財務情報の利益の質および価値関連性にどのような影響を及ぼしているか、また日本におけるIFRSsへの収斂が日本における連結財務情報の利益の質および価値関連性にどのような影響を及ぼしているかについて検討した。 3年間にわたる研究結果では、IFRSsの内容が、経営者の裁量を介入させる可能性がある一方で、IFRSsの採用または収斂は利益の質を高め、価値関連性も高めていることが明らかになった。その中でも、日本は、未だにIFRSsを採用していないが、日本の会計基準は、十分にIFRSsへの収斂を達成しており、EUおよびオーストラリアの企業の連結財務情報に比較して、利益の質が高く、かつ価値関連性も高いことが明らかになった。
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