2009 Fiscal Year Annual Research Report
企業業績予想公表後における株価のドリフト(PEAD)に関する実証研究
Project/Area Number |
21530485
|
Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
加藤 千雄 Osaka University of Economics, 経営情報学部, 准教授 (90319567)
|
Keywords | PEAD / 経営者予想 |
Research Abstract |
本研究ではPost Earnings Announcement Drift(以下PEAD)とよばれる証券市場における株価のアノマリ現象について考察を試みてきた。PEADとは決算公表後数ヶ月から数年にわたり、株価が上昇(市場予想を上回る決算の場合)あるいは下落(市場予想を下回る場合)トレンドを続けることをいう。また従来から企業業績は相当の期間好調(不調)な期間が続くことも広く知られてきており、PEADの存在は、市場が業績予想情報に対して過小反応(Under-reaction)することを意味し、効率的市場仮説に対する代表的な反証となっている。一方わが国では、証券取引所の要請により、経営者による業績予想開示が実質的に制度化されている(適時開示制度)。経営者自身による予想開示は他の先進国に類を見ない、わが国独自のものである。本研究ではこの制度の独自性に注目し、市場がどのように予想情報に対して反応しているのか、ということに焦点を当てている。 当該年度では当初計画に沿い、先行研究の調査とデータ・ベースの整備を中心に行ってきた。より、フォーマルな分析は次年度以降の課題であるが、直近までのデータを使ったパイロット・テストでは、(1)期首予想は半年から一年近いスパンでなだらかに株価に織り込まれているように見受けられる。これは実績情報をベースにした従来の研究(特に米国)と整合的な結果である。(2)しかし各四半期に開示される期中修正を織り込んだ場合、株価を動かしているのは修正情報ではないかとの疑問が浮かび上がってきた。アノマリ現象は従来研究では期間と規模が過大評価されているのではないか?また予想開示制度は市場の効率性向上に資するものではないかという2つの可能性が浮上してきた。これらを中心に次年度以降の計画遂行を進めたい。
|