2011 Fiscal Year Annual Research Report
四半期連結決算短信を活用した経営者の財務行動の分析
Project/Area Number |
21530490
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
来栖 正利 流通科学大学, 商学部, 准教授 (80268573)
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Keywords | キャッシュ・コンバージョン・サイクル / ブランド / 内部留保 / 信用力 / 売上債権 / 貸倒引当金 |
Research Abstract |
四半期決算情報を活用して、経営者の財務行動を説明することが研究課題である。かかる研究課題に基づいて、平成23年度は四半期連結決算短信を活用して、四半期キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の決定要因を探究した。本研究課題の問題意識は次の通りである。短期流動性の増減に経営者が敏感に反応すると考える理由は、営業活動によって稼得された現預金が将来の投資原資に活用できることに起因する。潤沢な投資原資を外部資金に依存することなく持続的に確保することが、存続可能性の改善のための基本的な命題である以上、営業活動を促す信用取引に着目しCCCの改善を指向するインセンティブが経営者に存在し得ることを容易に想像できる。 前述の問題意識に基づく実証分析の結果を要約しておきたい。発生主義項目に基づいて自己金融作用をもたらす会計手続きが四半期CCCを適切に説明しているとはいえない。四半期CCCの決定要因が発生主義項目に関する経営者の自由裁量に基づいているとは限らない。むしろ四半期CCCの決定要因は強力なブランドである。規模と盤石な信用に裏付けられたブランド力は有利な仕入活動と果敢な販路拡充を経営者に選好させている。企業のブランドは内部留保の裏付けをもつ信用力と安定した取引関係の構築に支えられている。これは強力な仕入価格交渉力の行使と有利な商製品の引渡条件の提示を可能する。安定したコスト管理は強力な信用力の維持改善に貢献するとともに果敢な販路拡充の選好という経営者のインセンティブを刺激する。とはいえ、盤石な財務構造が売上債権の滞留を招き、経営者は自らリスクの追加負担を招いている可能性がある。
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Research Products
(2 results)