2011 Fiscal Year Annual Research Report
ロバート・K・マートンの理論形成過程――未公刊資料の発掘・解析――
Project/Area Number |
21530501
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高城 和義 帝京大学, 文学部, 教授 (00085953)
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Keywords | ロバート・K・マートン / アメリカ社会学史 / ニューヨーク知識人 / ユダヤ系知識人 |
Research Abstract |
本研究は、現代アメリカを代表する社会学理論家ロバート・K・マートンが遺した彪大な未公刊資料を発掘・解析し、マートンの理論形成過程を、彼をめぐる知的交流と密接に関連させつつ、解明しようとするものであった。そのため本研究代表者は、平成21年から3年間毎夏コロンビア大学を訪れ、マートンの未公刊資料の発掘・解析に努めてきた。その結果、マートンは、ポール・ラザースフェルド、バーナード・バーバー、ジョン・リレイなどのコロンビア社会学界のみならず、ダニエル・ベル、モイニハン、セルズニック、ルイス・コーザーら、多数のニューヨーク知識人の知的交流の軸となる位置に立っていた理論家であったことを確認することができた。マートンは多数の社会学者の論文や著作を編集し、非常に広範な知的ネットワークを築いてきた人物であった。ライト・ミルズとドイツから亡命してきたハンス・ガースとを結びつけたのもマートンであった。 さらに本年度は、マートンが、上院議員としてアメリカの医療改革に尽力してきたエドワード・ケネディのブレーンとして、アメリカの医療改革に尽力していたことをも知ることができた。さらにマートンらが、1950年代以降のアメリカにおける黒人解放のために尽力していたことも解明することができた。 以上のような研究史上まだ知られていないマートンの知的ネットワークとその現実的意味を解明する手がかりを発見することができたという点で、本研究は、非常に重要な成果を売ることができたということができる。このような作業をさらにつづけるならば、アメリカ社会学理論形成過程について、その社会的文脈を解明するとともに、新たな「知の社会史」上の重要な貢献を達成することができるであろう。 本研究は以上のような重要な可能性を切り開くことができるという確信を与えるものとなっている。
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