2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナショナリゼーション概念にもとづく近代環境政治史の試み―ダム開発問題を事例として
Project/Area Number |
21530507
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
田中 滋 龍谷大学, 社会学部, 教授 (60155132)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 竜司 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (10291361)
|
Keywords | ナショナリゼーション / ダム開発 / 河川 / 国土開発 / 山村 / 環境 / 社会学 |
Research Abstract |
本年度は、大正~昭和初期の戦前期と戦後の高度経済成長期の両時期におけるダム開発が山村、林業、流域社会にそれぞれどのような変容をもたらしてきたのかを、戦前については庄川(富山県)を、戦後については熊野川(奈良県・和歌山県・三重県)をそれぞれ事例として、収集した諸資料にもとづきつつ、ナショナリゼーションの視点から比較分析をおこなった。前者においては、旧来の河川利用(農業用水、流筏、漁業など)に発電が加わることで起こったいわゆる利水競合問題を解決するための法制度がまだ整備されず、また木材業者・流筏業者が現在では考えられないほどの財力をもっていたことから、ダム建設問題が大事件(庄川流木事件)へと発展していったが、後者においては、戦後復興のために電源開発が国家の至上命題となっていたこと、またそのための法整備も進みつつあったことから、ダム開発に対する反対運動は抑え込まれることとなった。 また、ナショナリゼーション論研究を上記の比較分析と関連させつつおこなった。特に本年度においては、ダム開発という河川の近代化を推進する事業と河川の国有化との関係について、ナショナリゼーションの視点から理解を深めることができた。上述した戦後の電源開発のための法制度の整備は、河川の国有化を押し進める大きな要因となったことが明らかとなった。上記の研究を元に、成果の一端を、論文「近代日本の河川行政史-ナショナリゼーション・河川の近代化から環境の事業化へ」(宮浦富保・牛尾洋也編『里山のガバナンス』晃洋書房 2012)として発表した。
|