2011 Fiscal Year Annual Research Report
小集団営農の形成:現代農村における代替的な営農志向の社会学的研究
Project/Area Number |
21530510
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳川 直人 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (10227572)
|
Keywords | 農村社会学 / 営農志向 / 小集団 / 意味世界 |
Research Abstract |
今後の日本農村における営農志向の分化状況をさぐること、それも何らかの共同性や学習活動に支えられ、新しい生活哲学の可能性をはらんでいる、という語義での集合的性質や代替的な性格を持った新たな志向に着目すること、とりわけ小集団営農の可能性をさぐることが、本研究の目的だった。方法的には、これまでの研究で蓄積されてきた「営農志向」を鍵概念とし、生活世界における「意味」にも注意しながら、事例調査やインタビューなどの質的研究を進めてきた。具体的に、1)山形県庄内地方において実施した「第4次営農志向調査」の結果を受け、引き続き事例分析を試みた。現地では、全般的に受託組織化が進行しており、それが集落営農と折り重なっている場合もある。コメ回帰が進みながらも転作への積極的対応、新規作物への取り組みも進展している。また、そうした生産活動が販売活動を念頭において進められ、JAを介した産直や直売所などの活動が展開している。小集団営農と言ってもこのように性質のちがいがありうること、または、分化した小集団の機能別組み合わせが見られることがわかってきた。今後、これと新たに浮上した生活問題(介護、医療、教育、社会的孤立等々)とを関連させて農民生活の実際に迫る必要がある。2)北海道根釧地方においては今年度も重点的なインタビュー調査を継続した。近代化・大型化の傾向が大勢を占めつつも、低投入・草地重視型の路線への関心がいっそう高まっている。営農志向の分化傾向は明らかである。が、後者の中でもさらに生産者の生産・生活上のアイデンティティが分化してきている。また、そのアイデンティティが今日の食農文化やそれをめぐる社会的議論との応答関係にあり、積極的な発信や伝承の動きも盛んになっている。今後、それが今日の食農文化にとっていかなるインパクトを持つものであるかという点に焦点を合わせて分析する必要があることがわかった。
|