2009 Fiscal Year Annual Research Report
美術館経験のヴィジュアル・スタディ:社会的空間の視覚的編制をめぐって
Project/Area Number |
21530516
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
安川 一 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 教授 (00200501)
|
Keywords | 視覚社会学 / 美術館来館者 / 来館者研究 / ヴィジュアル・スタディ / ヴィジュアル・メソッド / 写真誘出インタビュー / 画像データベース / ヴィジュアル・ナラティヴ |
Research Abstract |
本研究は人びとの美術館経験を題材にした社会学的ヴィジュアル・スタディである。その目的は、第1に来館者の主観的経験を焦点に据えた視覚社会学的な来館者研究モデルの提示、第2に社会学的ヴィジュアル・メソッドの開発(「画像データベース」ベースの研究法確立とヴィジュアル・ナラティヴ分析の手法開発)、そして第3に視覚社会学的研究の可能性の展望である。美術館をフィールドに、人びとの経験を画像と言説を手掛かりにして記述し続け、それらの集積・構成を通じて社会的時空のあり方を"来館者視角中心的に"表象する、それが本研究の主題である。 プロジェクト1年目(平成21年度)の主要作業は調査デザインに則った調査実施とデータ収集だった。9~11月に福岡市・福岡アジア美術館で開催された「福岡アジア美術トリエンナーレ」において、9月下旬から3週間ごとに3回(1回は3日間)、ヴィジュアル・メソッドによる来館者調査(来館者による館内写真撮影とその写真を用いた写真誘出インタビュー)を実施し、スクリーニングを経て最終的に来館者316組の手になる画像(約13,500点)と音声(4,800分以上)を得た。そのうちの中心データは、来館者=調査対象者がそれぞれに自分自身の撮影済写真から選択した写真6点(総計1,896点)と、その1点ごとの説明言説である。これら中心データは、一方で被写体ベースの画像コーディングを経てデータベースを仮構築する材料となり、また他方、写真ごとに説明抜粋を添付したフォト・カードへと加工され、3回の調査期間それぞれの終了後に美術館に展示された(来館者の視角の展示)。後者は調査成果の早期フィードバックの試みでもあるが、こうした成果展示が、また調査への参加それ自体が、来館者の美術館経験を様々に活性化することもあらためて確認された。データ収集後は画像データベース構築の作業が続いている。
|