2010 Fiscal Year Annual Research Report
美術館経験のヴィジュアル・スタディ:社会的空間の視覚的編制をめぐって
Project/Area Number |
21530516
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
安川 一 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (00200501)
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Keywords | 視覚社会学 / 美術館来館者 / 来館者研究 / ヴィジュアル・スタデイ / ヴィジュアル・メソッド / 写真誘出インタビュー / 画像データベース / ヴィジュアル・ナラティヴ |
Research Abstract |
本研究は人びとの美術館経験を題材にした社会学的ヴィジュアル・スタディである。その目的は、第1に来館者の主観的経験を焦点に据えた視覚社会学的な来館者研究モデルの提示、第2に社会学的ヴィジュアル・メソッドの開発(「画像データベース」ベースの研究法確立とヴィジュアル・ナラティヴ分析の手法開発)、そして第3に視覚社会学的研究の可能性の展望である。美術館をフィールドに、人びとの経験を画像と言説を手掛かりにして記述し続け、それらの集積・構成を通じて社会的時空のあり方を"来館者視角中心的に"表象する、それが本研究の主題である。 プロジェクト2年目(平成22年度)の中心課題は、1年目に得られた画像/音声データを用いて、「来館者の美術館/展示経験を来館者自身の視点から画像と言説で再現/表象する」というモチーフを具体化する画像データベースを構築することだった。このデータベースは、1)来館者の視界、2)被写体との関わりかた、3)美術展の集合的表象、という3つの焦点を表現し、かつ、ヴィジュアル・ナラティヴ(画像と言説の併置に紡ぎだされる物語)を集積して、分析素材を集約するとともにそれ自体が分析結果の表現になるはずのものである。 もっとも実際には、音声データの一部をトランスクリプト化し、データベースの粗設計をするところまでで年度内の作業を終えた。はじめ、316組の写真誘出インタビューの音声データをディクテーション・プログラムを用いてトランスクリプト化することを試みたが、結局、精度の悪さから実用を断念し、人の耳と手の作業に託すことにした。データ量が多く、予算が不足したため、作業は中途で終えなければならなかった。残りデータのトランスクリプト化はプロジェクト最終年に引き継ぎ、あらためてデータベースの完成を急ぐとともに、当初計画の完遂を目指すこととする。
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