2011 Fiscal Year Annual Research Report
地域のブランド性と人口減少社会における地域社会の維持
Project/Area Number |
21530520
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村山 研一 信州大学, 人文学部, 教授 (80115378)
|
Keywords | 地域ブランド / 地域社会 / 人口減少社会 / 地域振興 / 中山間地域 |
Research Abstract |
長野県内を中心として、地域イメージを高めることに成功した地域と、知名度の上昇と地域イメージの向上を目指している地域を選定し、地域のブランドイメージが形成される過程とブランドイメージ形成の効果(地域の社会、経済に与えた効果)について、いくつかの事例を取り上げて調査を行った。 前者の代表例として安曇野を取り上げ、安曇野という呼称の生成と普及の過程を、観光資源の形成過程と関連させて長期的視点から分析した。また、これと関連させて、梓川の水利開発を事例として、水源部分(上高地)の自然保護・景観保護と、中下流部分の電源開発、開墾が、対立から共存へと転換しながら、地域のブランド化にとって中核的意義を持つ資源が保存される過程について長期的視点から分析を行った。後者の事例としては、長野県の大鹿村とそれに隣接した中川村を取り上げた。いずれの村も農業以外の基幹産業は存在しておらず、特に大鹿村では過疎化と限界集落化が進んでいる。このような中で、美しい景観や伝統芸能といった自然資源・文化資源を活かした地域振興への取り組みを調査するとともに、その効果と、Iターン定住者が地域維持に果たす機能に焦点を定めて分析を行った。 地域のブランド化という振興手法は曖昧性を持ち即効性を持たないが、中山間地域においては地場資源を活かした確実な手法である。これらの資源を活用した振興方策は観光産業の成長や観光客の増加という直接的効果が大きいとは言えないが、中高年のIターン定住という流れを作り出しており、地域維持に貢献していることがこれらの調査事例から浮かび出てきた。今後、このような流れをより低い年齢層に及ぼすためには、新たな就業の場を作ることが重要であり、地場資源を活かした小産業、小ビジネスの育成が課題になる。
|