2009 Fiscal Year Annual Research Report
遠距離介護と仕事の両立を可能にするワーク・ライフ・バランス施策についての研究
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21530528
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鍋山 祥子 Yamaguchi University, 経済学部, 准教授 (00335762)
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Keywords | 遠距離介護 / ワーク・ライフ・バランス / 地域福祉 |
Research Abstract |
当該年度の研究実施計画は大きく二つあり、(1)ワーク・ライフ・バランス(以下、WLBと略す)の先行研究から日本のWLBの特殊性の明確化と、(2)仕事を持ちながら遠距離介護をする別居子へのインタビュー調査の実施である。 まず、(1)については文献研究および日本における政策策定にかかる資料収集とその分析をおこなった。そこから、日本のWLB施策が少子化対策と男女共同参画(女性労働支援)という視点から始まったものの、超高齢化する社会において、高齢者介護と労働の両立問題や、高年齢者雇用の問題など、男女という性別を超えた根本的な労働問題として強調されつつあるという日本におけるWLBの特徴を明確にした。研究成果はWLBに関する講演会などにおいて発表した。 また、(2)の聞き取り調査については、実際に仕事をしながら遠距離介護をおこなっている労働者だけでなく、遠距離介護支援をしているNPO法人、並びに、そのNPO法人の法人会員になり、従業員への遠距離介護支援サービスを提供している民間企業の人事担当者へのインタビュー調査も実施した。そこから明らかになったのは、まず、労働者の立場では、遠距離介護支援があってこそ今の仕事が継続できているというサービス利用についての満足感の高さである。一方、特別な遠距離介護支援を利用していない実践者の場合、親の住む地域にいる親類や友人関係に頼っていたり、自分の労働時間との折り合いで悩みながら遠距離介護を継続していた。次に、遠距離介護支援サービスを従業員に提供している民間企業については、福利厚生ではなく、人事戦略や人材マネジメントの一貫として、早くからWLBに取り組んでおり、その中で育児だけでなく介護と仕事の両立という現実問題に対処するために遠距離介護支援を取り入れたという経緯が明らかになった。しかし、サービス利用はまだ少なく、今後の推移に注目しているという段階であった。研究成果については論文にて発表した。
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