2009 Fiscal Year Annual Research Report
1990年代以降の日韓の就業体制の変化と労働力の非正規化に関する比較研究
Project/Area Number |
21530529
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
横田 伸子 Yamaguchi University, 大学院・東アジア研究科, 教授 (60274148)
|
Keywords | 非正規労働者 / 就業体制 / インフォーマリティー / 都市非公式部門 / 社会的脆弱階層 / 社会的排除 |
Research Abstract |
平成21年度は、主に韓国の非正規労働者に関するマクロ統計資料のraw dataを渉猟し、分析した。この結果、韓国の非正規労働者の約20%が、1970年代に都市下層として広範に形成された「都市非公式部門」と重なり合う部分であることが推定された。韓国政府は、これらの人々を法や制度の保護から排除された、インフォーマリティの強い「社会的脆弱階層」と呼んでいるが、その実態を明らかにすることで韓国の就業体制の特徴をとらえることできると考えた。そこで、韓国統計庁が行っている「経済活動人口付加調査」のraw dataを分析し、社会的脆弱階層の特徴をマクロ統計上でできる限り明らかにしようとした。 しかしながら、マクロ統計資料だけでは、韓国の社会的脆弱階層の実態に接近するのに限界があるため、平成22年度調査のpilot調査として、韓国の非正規労働者に対する設問調査を行った。この調査は、韓国で非正規労働者を組織する労働組合を通じて設問票を配布し、直接、非正規労働者に記入してもらう形で行われた。また、日本労働組合総連合会(連合)が行った、ワーキングプアに関する設問調査に対応する形で設問内容を設計し、日韓の社会的脆弱階層の比較分析ができるように配慮した。設問票を1000部配布したうち、218人から有効回答を得た。この調査の規模自体それほど大きくなく、韓国の社会的脆弱階層の特徴を一般化するには限界があるが、社会的脆弱階層の内部でも、ジェンダーによって、社会的排除のされ方が異なることが明らかにされたことの意義は大きい。すなわち、男性より女性の方が、法や制度の保護から排除され、非正規労働者から正規労働者への移動の可能性が極めて低いことがわかった。
|