2010 Fiscal Year Annual Research Report
1990年代以降の日韓の就業体制の変化と労働力の非正規化に関する比較研究
Project/Area Number |
21530529
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
横田 伸子 山口大学, 大学院・東アジア研究科, 教授 (60274148)
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Keywords | 非正規労働 / 社会的脆弱階層 / 生産体制 / 組立型工業化 / 労働市場体制 / 就業体制 / ジェンダー構造 |
Research Abstract |
韓国で、「社会的脆弱階層に関する実態調査(設問調査と面接調査)」と「生産体制の変化と非正規労働力の活用方式に関する実態調査(設問調査と面接調査)」という二つの実態調査を行った。こうした実態調査は、マクロ資料の計量分析に重点を置いてきたこれまでの韓国の労働研究においては、あまり例がなく、韓国の社会的脆弱階層の実態や生産体制の変化と労働力の非正規化の実態を知る上で、きわめて貴重かつ有益な調査であった。 とくに、社会的脆弱階層に関する実態調査では、社会的脆弱階層の職業経歴や生活史にまで踏み込んで、一人当たり2~3時間の深層面接を行った。これによって、これまで知られることのなかった、非正規労働者、社会的脆弱階層、ワーキングプア、非経済活動人口との循環関係が明らかになった。 また、生産体制の変化と非正規労働力の活用方式にする実態調査では、「組立型工業化」と呼ばれる、技術・技能節約的な韓国の生産体制が、2000年以降、技術集約的・技能節約的な生産体制に深化することによって、労働力の非正規化が急速に進展したことが明らかになった。これまで、生産体制の変化と非正規化の関係に着目した事例調査はきわめて少なく、本調査によって、韓国のポスト工業化社会における労働の在り方が浮き彫りになったのである。すなわち、重化学工業化段階に形成された男性正規労働者から成る内部労働市場体制が、非正規労働者化の急速な進展によって切り崩されていることがわかった。 以上の、調査の分析結果の一部は、社会政策学会中四国部会において、「1990年代以降の韓国の就業体制の変化」という題目で報告された。そして、その報告をもとに、拙稿「1990年代以降の韓国における労働力非正規化とジェンダー構造」(『大原社会問題研究所雑誌』No.632所収)を執筆した。
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