2009 Fiscal Year Annual Research Report
官民/公私関係の再構築と地域ガバナンスの課題をめぐるポスト福祉国家の比較社会研究
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21530532
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中西 典子 Ehime University, 教育学部, 准教授 (90284380)
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Keywords | 地域戦略パートナーシップ / コミュニティ・ガバナンス / タワー・ハムレッツ区 / NHS改革 / コミュニティ・ケア改革 / プライマリー・ケア・トラスト / コミッショニング |
Research Abstract |
本年度は、まず、英国ロンドン東部のタワー・ハムレッツ区においてこれまで行ってきた現地調査の中間取りまとめとして、5月に開催された地域社会学会大会にて、英国における地域戦略パートナーシップ(Local Strategic Partnership : LSP)のインパクトと課題について、タワー・ハムレッツ区の事例をもとに報告を行った。LSPは、一つに、コミュニティによる参加、二つに、公共サービスの向上、三つめに、行政機関(The Public Agencies)の連携、をめざして設置されてきたものであり、その内実は、行政によるメーンストリーム・サービスを個々のコミュニティのニーズに見合ったかたちにしていくために、LSPのステークホルダーがそれに積極的に関与し、行政諸機関と連携しつつ公共サービスを効率的に供給していくという、ガバナンスの一形態とみることができる。しかし、タワー・ハムレッツ区の事例からみると、LSPが、かかるコミュニティ・ガバナンスを理念としながらも、現実には、政府の資金提供に基づく公共サービスのマネージメントとしての色彩が強く、優先項目の設定やアウトカムの評価などを通じたコントロールや、政府のイニシアティブによってコミュニティの意思決定が方向づけられるという状況にあることは否めず、コミュニティの多様な主体が連携していくというよりもむしろ、コミュニティの声を遠ざけてしまっているという問題が見いだされた。また、LSPは、タワー・ハムレッツ区に代表されるような貧困地域の再生に有効な手段として導入されてきたという経緯から、ヘルシー・リビングという課題において、コミュニティ・ケア改革とも連動しており、とりわけ、NHSと地方自治体(社会サービス部)との政府間関係、および保健医療サービスと福祉サービスとの連携・協働の位相を分析していくことの重要性が明らかとなった。そのため、NHS改革の動向とともに、LSPの主要なアクターの1つであるプライマリー・ケア・トラスト(PCT)に着目し、そのコミッショニング(委託契約)を通じた行政機関と民間およびコミュニティの有力なアクターとの関わりについて、さらに分析を進めた。
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[Journal Article]2009
Author(s)
中西典子
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Journal Title
『人それぞれ介護のステージ-続・高年期の生き方-』(担当部分「持続可能な社会的介護をめざして」)(横山未知編)(丸善)
Pages: 6-12
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