2011 Fiscal Year Annual Research Report
官民/公私関係の再構築と地域ガバナンスの課題をめぐるポスト福祉国家の比較社会研究
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21530532
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中西 典子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90284380)
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Keywords | 地域戦略パートナーシップ / コミュニティ・ガバナンス / タワー・ハムレッツ区 / ヘイヴァリング区 / サードセクター / ビッグ・ソサエティ / 保健医療サービス / 福祉サービス |
Research Abstract |
本年度は、前年度からの継続課題について、数度にわたる研究打合せを進めながら、10月に英国ロンドン東部のタワー・ハムレッツ区における現地調査を実施した。英国では、2010年5月の総選挙によって、労働党から保守党+自由民主党による連立へと政権が交代するなかで、従来の労働党政権下で行われてきたパートナーシップ政策およびコミュニティ政策も転換期を迎えている。前政権下で各地方自治体において策定が義務づけられたコミュニティ・プランと、それに伴って創設された地域戦略パートナーシップも、10年を経て、新たな見直しが各自治体において進められてきている。本年度の調査においては、ロンドン東部のタワー・ハムレッツ区に加えて、ロンドンの特別区では東端に位置するヘイヴァリング区(London Borough of Havering)を新たに調査対象地として、両地域での比較という視点をふまえつつ、新政権下におけるパートナーシップ政策の動向を把握した。タワー・ハムレッツ区が若年人口および移民が多く、流動性の高い地域であるのに対し、ヘイヴァリング区では、老年人口および白人が多く、定住性の高い地域であるという、相互に異なる特性を有している。本年度の現地継続調査における訪問先は、地方自治体および外郭団体では、タワー・ハムレッツ区(London Borough of Tower Hamlets)、地域レベルで保健医療サービスと福祉サービスとの連携を図るTHINk(Tower Hamlets Involvement Network)、ヘイヴァリング区、ボランタリー組織の中間支援を担うHAVCO(Havering Association of Voluntary and Community Organisations)、サードセクターでは、その全国組織であるNCVO(National Council for Voluntary Organisations)のBig Society Network担当者、政府とサードセクターとの協定書であるコンパクトの評価機関であるCompact Voice、等であった。前年度および本年度の現地調査の結果は、2012年3月に広島市立大学で開催された日本NPO学会第14回大会での「英国における市民社会政策とボランタリー・セクター:「大きな社会」政策への対応をめぐって」というタイトルの公募パネルにおいて、「政権交代とパートナーシップ政策の推椥と題して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、従来の官主導であった「公共」概念の再検討を通じて、新しい公共性に基づくポスト福祉国家の局面を、「官民パートナーシップ」の先駆的な実践を蓄積してきている英国の経験をふまえて分析することを目的にしているが、そのための英国調査をすでに二度にわたって実施してきており、現地訪問調査データの整理や分析を通じて、パートナーシップ政策の現状把握と地域レベルでの検証を進めていることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度でもある次年度においては、これまでの現地調査をふまえて分析を進めてきた英国のパートナーシップ政策の一定のまとめを行うとともに、日本における官民/公私関係の分析にも力を入れていく必要がある。「私」と「公」を媒介する民間の非営利組織やボランタリー組織、コミュニティ組織などの現状と課題にも着目しつつ、英国とは異なる歴史的・社会的・政治的・文化的脈絡を持つ日本の現実に照らして、官民/公私関係の再構築を展望すると同時に、地域ガバナンスの課題がどのようなかたちで問われていくのかという点に関しても、理論的・経験的に分析を進めていきたい。
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