2011 Fiscal Year Annual Research Report
旧沖縄縣時代におけるハンセン病患者の現実と救済活動に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
21530544
|
Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 文哉 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (90305798)
|
Keywords | ハンセン病 / 救癩 / 青木恵哉 / 沖縄MTL / 沖縄縣 / 大堂原「占拠」 |
Research Abstract |
本年度に掲げたのは、課題(1)「昭和初期」沖縄縣の経済-政治的状況に関する沖縄近世史研究の検討、課題(2)1935年に結成されたキリスト教調教派の<救癩>団体「沖縄MTL」(Mission to Leper)の結成をめぐる考察、課題(3)「大堂原事件」から「沖縄MTL」までの過程を、青木恵哉の自伝『選ばれた島』(1972/新教出版)の記述を歴史社会学的に再構成することの、3課題であった。 これら3課題のうち、昨年度の研究の中心になったのは、課題(3)に掲げた「大堂原事件」の歴史社会学的再構成であった。青木恵哉の自伝『選ばれた島』と彼の当時の書簡を比較・検討することにより、病者による大堂原「占拠」をめぐるシマ社会相互の関係や「占拠」を受けたシマ社会の行動様式について、考察をいった。「占拠」を受けた済井出のシマ社会は、隣接のシマ社会から孤立していったことが、この「占拠」を刑事事件へと変容させていったこと、他方、当時のハンセン病罹患者たちは、こうした闘い方ができるまでに、組織力をつけていたことが、明らかになった。 この件と関連する課題(2)については、資料の整理を行うに留まったが、かなり大掛かりなサーベイを要する論件であることがみえてきた。課題(1)に関しては、検討が必要となる文献・資料の概略が掴めるまでのところに留まった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究途上にて、当該問題である「沖縄MTL」文献・資料の少なさ、及び「沖縄MTL」を位置づけるより広い文脈(沖縄キリスト教史)が必要になったため、その方面の文献・資料の蒐集、聞き取り調査に、時間を多く費やす必要があったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
療養所がなかった時代の沖縄本島区における<救癩活動>の軸は、青木恵哉自身の活動が嚆矢なるが、1935年以降は「沖縄MTL」による活動が展開された。この2点の周辺を探る視座を保持する限り、その活動の内実から、当時のハンセン病患者たちが置かれた現実を照射することは、それ程難しい問題があるわけではない。問題になるのは、参照すべき資料が少ないことにつきると考えている。
|
Research Products
(2 results)