2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530551
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鹿又 伸夫 Keio University, 文学部, 教授 (30204598)
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Keywords | 社会移動 / 地位達成 / 機会格差 / 脆弱な地位 / 多連関モデル |
Research Abstract |
連続変数をもちいた既存の地位達成分析と、カテゴリー変数をもちいるクロス表分析とを統合する分析手法として、条件付き多項ロジットを社会移動データに応用する方法について研究を進めた。これによって、既存の地位達成分析が社会移動における階級・階層間の質的に異なる機会格差を分析できないという批判を克服し、他方でカテゴリー変数をもちいながら多変量の分析を可能にした。 この新たな分析方法によって、現代日本の地位達成についての分析を進めた。第一に、教育達成、初期職業、現職達成にかんする基本的変数だけを扱った地位達成の基本モデルについて検討した。その結果、(1)教育達成は親の地位から影響をうけるが、その後の職業的地位達成にたいしては本人の教育達成が強く影響しており、既存の知見を裏付けるものであった。しかし、(2)職業的地位達成では、既存の地位達成分析で扱われなかった世代間非移動が比較的に強い影響をしめし、また年齢的に変化していた。(3)女性の地位達成における機会格差は男性より大きく推定されたが、出生コーホート間の相違が大きく、女性の地位達成そのものが大きく変動したことを示唆した。 第二に、教育達成の過程について、多変量を投入することによって、文化資本論、相対的リスク回避説、ウィスコンシン・モデルによる理論的説明を比較した。その結果、学業成績と進学意欲(教育アスピレーション)が親の地位からの影響を媒介しながら、教育達成にきわめて強く影響していることを確認した。この知見は、文化資本論と相対的リスク回避説が指摘する媒介メカニズムを全否定するものではないが、ウィスコンシン・モデルによる説明にもっとも適合していた。
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