2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530551
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鹿又 伸夫 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30204598)
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Keywords | 教育達成 / 進学機会格差 / 進学意欲 / 学力 / 所得格差 / 家族ライフステージ / 貧困リスク |
Research Abstract |
平成23年度は、教育達成と所得格差にかんする研究成果がえられた。 教育達成については、日本と台湾の比較によって、高校教育進学と大学進学にたいする親の階層による進学機会格差を検討した。その結果、両国とも、親の階層による進学格差は、高校教育進学ではその高校教育が飽和することによって進学格差が解消に向かっていた。他方の短大進学と対比した大学進学への親の階層による進学格差の出現は、日本と台湾で大学の飽和時点と異なる関係をしめした。これは、教育の飽和によって、親の階層による進学格差が高校から高等教育の質的相違に移転すると単純にはいえず、各国の高等教育のもつコンテキストによって進学格差に相違が生まれることをしめすものだった。 また、日本の教育達成格差をもたらすメカニズムについて分析を進め、近年注目されている文化資本論や想定的リスク回避説による説明より、地位達成研究の根幹にあったウィスコンシン・モデルが適合的であることを確かめた。具体的には、親の階層による影響をほとんど媒介しない進学意欲(教育アスピレーション)と学力が各人の教育達成を直接的により説明することを確認した。 他方で、所得格差については、とくに貧困リスクと家族ライフステージの関連を検討した。その結果、年齢とともに変化する家族形態つまり家族ライフステージが貧困リスクに強い影響を与えることを確認した。貧困リスクは男女で異なり、とくに若年女性はどの家族形態に属するかによってリスクの大小が違っていることが特徴的だった。具体的には、若年女性で親と同居する二世代世帯で貧困リスクがきわめて小さく、自分が親世代の一人親世帯で貧困リスクがきわめて大きかった。
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