Research Abstract |
平成22年年度は,若年世代における社会的格差の実態を解明するために,アンケート調査を実施した.調査地域を東京都西東京市に限定することで,全国調査より深い分析をすることを目指した.そこで,母集団は西東京市在住の男女とした.7月に西東京市役所にて選挙人名簿から1200人をランダムサンプリングをして,調査対象者とした. 8月に郵送調査を実施した.平成21年度におけるインタビュー調査から,現代日本ではキャリア形成だけでなく,ひろくライフスタイルにおいて格差が顕著になっていることが示唆されていた.そこで,教育,家族構成,職業,キャリア,収入,意識に加えて,ライフスタイルについて詳しく質問した.計画標本1200人のうち760人から有効回収できた(回収率64.0%,ただし住所不明による返送13人を母数に含まない).郵送調査では通常,回収率が2~4割となる.今回はかなり上回っているので,正確な分析が期待できる.母集団と比較して,年齢,教育などのゆがみはなかった. 探索的な分析を行った結果,ライフスタイルのうちとくに食生活と健康において,格差があることがわかった.食品群別の摂取頻度,外食,好き嫌い,食生活への意識といった食生活が,教育や収入に影響されていた.さらに,疾病歴,慢性病,メンタルヘルス,主観的健康感,ヘルスリテラシー,定期健康診断,運動,飲酒,喫煙といった健康指標への媒介変数となっていた.このメカニズムは,年齢や家族構成で統制しても残った. 成果は,日本社会学会,数理社会学会で発表された.食生活が社会的格差の視点から分析されたことは,これまでなかった。
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