2010 Fiscal Year Annual Research Report
更生保護ボランティアにおける「ソーシャルインクルージョン」実践に関する研究
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21530555
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
鴨志田 康弘 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60408979)
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Keywords | 更生保護(事業) / ソーシャルインクルージョン / 保護司 / 更生保護女性会 / BBS会 / 保護観察 / 福祉 / 更生保護対象者 |
Research Abstract |
本研究課題である更生保護ボランティアによるソーシャルインクルージョンについては、実践レベルにおいて見た場合、保護司による更生保護対象者の直接処遇と更生保護女性会、BBS会などによる間接的支援という2つの側面がある。その一方、一般的に更生保護ボランティアによる実践といった場合、保護司による直接処遇が中心となり、間接的支援は余り注目されない傾向が強い。しかし、社会における更生保護の裾野の広がりという観点からすれば、むしろこれまで余り注目されてこなかった間接的支援の方にこそ、より一層目を向ける必要があると思われる。これは社会における犯罪被害者への関心(共感)がより高まりつつある状況を踏まえるならば、極めて重要な点である。 次に、保護司による直接処遇に関して見ると、更生保護対象者による保護司宅放火事件に象徴されるように、更生保護対象者の保護観察、保護司に対する認識に変化が見られるのは否定できない。従来、保護司は更生保護対象者にとって、自らの社会復帰の是非を左右する非常に大きな力を有する者として見られてきたのであるが、現在では保護観察という一種のサービスの提供者といった見方が強くなってきている。こうした傾向は、更生保護の福祉的側面の強化が、その政策の中身を徐々に変えて行った結果であると思われる。もちろん、警察監視のように犯罪予防を過度に重視し過ぎるのも、対象者のソーシャルインクルージョンの観点から問題はあるが、余りにも福祉的側面を重視し過ぎてしまうことによる弊害も決して看過されてはならないだろう。 こうした問題点に対しては、そのための提案などを含め、次年度の研究課題としたいと思う。そして、その際に鍵となると思われるのは、更生保護事業全体を歴史的観点なども含め、総合的な観点から捉え、それをフィールドワークで得られた知見と融合し、その上で解決策を探ることであると思われる。
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Research Products
(1 results)