2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子技術・生殖技術への対応を通して見る〈生命〉観の比較社会学的研究
Project/Area Number |
21530560
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 秀一 明治学院大学, 社会学部, 教授 (00247149)
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Keywords | 社会学 / 生命 / 遺伝子 |
Research Abstract |
本年度は、文献資料における<生命>観念の分析作業を継続するとともに、夏期には医療倫理に関する国際学会(ただしヨーロッパを中心とする)に参加し、主に各国における生殖補助医療技術(着床前診断など)をめぐる議論や規制のあり方について知見を深めた。本年度を含め、この三年間の研究期間において明らかになったものを概念的に整理するならば、それはわれわれの<生命>観におけるある種の矛盾めいた性格である。一方で、<生命>は「連続性」や「つながり」といった概念との連接において語られる。それは「生命樹」のような通時的なつながりを指す場合もあるし、エコロジカルな共時的な連鎖を指す場合もあるが、いずれにせよそのように語られる<生命>は個体や種をより大きな全体的ネットワークの一部に組み込むものである。だが他方、特に医療倫理に関わるような場面で「生命」や「いのち」という言葉が用いられるときには、一人ひとり、一つ一つの個体の「かけがえのなさ」が強調されることが多い。ある種の宗教や思想はこの矛盾めいたものを擬似的に解消しようとするが、多くの場合それは個の生を全体的なる生(種、「大いなる生命の連鎖」、自然、等々)に還元することでしかなく、そうした還元に対抗しようとする思想もまたあまた試みられてきた。以上のように概略を描くことのできる<生命>観を、人々が抱き科学の基盤でもある形而上学(いわば民衆の形而上学)をより克明かつ精緻に解明するという課題は、平成24年度からの新たな基盤研究(C)に引き継がれた。
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