2014 Fiscal Year Annual Research Report
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21530569
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
イシカワ エウニセアケミ 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 准教授 (60331170)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 在日ブラジル人 / 子どもの教育 / 母語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在(2014)、在日ブラジル国籍者は17万人であり、その多くは日本で初等教育を受けたか現在受けている現状であると言える。来日当初の1990年代から親の労働・生活の不安定の状況はほとんどかわらないまま、子どもたちが抱える問題は、家庭内から始まり、教育現場である学校、そして地域社会にまでいたるようになった。しかし、このような状況の中でも、日本で育ったブラジル人の子どもが徐々に日本の大学に進学し、日本人と同じ入学試験を受けて合格している事例が確認できた。 本研究では、在日ブラジル人の第二世代を対象に行ったインタビュー調査をもとに日本の大学に入学した彼・彼女らの現状を明らかにしている。なお、日本の生活において、外国人としての立場をどのように認識しているかを調べるため、国籍と帰化への思いに注目し、彼・彼女らのアイデンティティ形成過程にも注目している。幼児期から日本で暮らしているケースでは、自分たちは日本人であり、これからも日本でずっと生活をするであろうと考えているのが特徴である。国籍に関しては、主に幼児期から来日している人たちは帰化を考えている。また、帰化の目的は、日本人になろうという主観的な意識より、日本での就職や今後の生活を考えたときに何かと有利になるからだと言う意見の方が多かった。 一方、海外調査(ブラジル)では、日本で育った子どもたちが親の都合でブラジルへ帰国して、今度はブラジルの学校をはじめ、ブラジル社会への(再)適応過程を調べいる。ブラジルでは、子どもたちはポルトガル語の言語を(再)習得し、向こうの学校文化になれるまで様々な問題に直面しているが、大学進学を果たしたケースも数件確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の国内調査及び海外調査が順調に進めることができ、日本の大学に進学した若者と直接話ができたのが大きな達成度につながっている。なお、海外調査では、ブラジルに帰国した子ども/若者にも直接会って、彼・彼女らの経験を知ることができた。なお、ブラジル国内では、日本語学校の見学調査ができ、そこに通う日系人の子どもや若者の日本語習得の目的や意識を調べることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、日本とブラジルの異なった二つの受け入れ社会の比較をし、日系人の子どもがそれぞれの国で直面する問題の整理に努めたい。その分析により、移民の第二世代が受け入れ社会の態勢により、言語習得や親の母語保持の状況に注目をする。つまり、「単一民族」といった考え方が強く残る日本社会と移民国であり、多様性が当たり前の社会であるブラジルでは、同じ子どもがそれぞれの環境で生活をした場合、本人の意識にも変容が生じる。こそで、改めて日系人としてのエスニック・アイデンティティの形成過程を考察する。
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