2011 Fiscal Year Annual Research Report
専門技術者に対する職業教育・訓練の日米比較-とくに自動車産業を中心にして-
Project/Area Number |
21530573
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大野 威 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70304293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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Keywords | 社会学 / 自動車 / 企業内教育 / 労働 / 徒弟訓練 / 専門技術者 / 日米比較 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度にひきつづきアメリカの自動車産業における徒弟訓練にかかわる資料の収集と分析をおこなった。 アメリカの自動車産業では、労働協約によって熟練職種のワークルールや徒弟訓練の詳細が細かく規定されている。アメリカの自動車産業では、2009年の労働協約の途中改訂に続き、2011年に新労働協約の締結がおこなわれており、本年度は、とくにこれらを中心に資料の収集とその分析を進めた。 分析の結果、経営危機の真っただ中に改訂された2009年の労働協約では、1)熟練職種の統合(職種領域の拡大)が進められたこと、2)ただし拡大される職域については追加的な専門訓練がおこなわれているため訓練あるいは専門性の希釈化はなされていないこと、一方、大規模なリストラを経て著しく経営状態が改善した2011年に締結された新労働協約では、3)熟練職種の統合の動きにストップがかかったこと、4)外部委託された一部の熟練職種が再び内部化されたこと、5)労使共同で優れた熟練職種チームを研究し、そのやり方を他に広げるプロジェクトが立ち上がったことなどが明らかとなった。 アメリカの自動車産業ではこれまで、熟練職種の多さが作業上の柔軟性を失わせているとの見方があり、それが2009年における熟練職種の統合につながった。しかし、アメリカでは、熟練職種も含め労働組合は、伝統的に技術革新を否定する立場にはなく、その意味で熟練職種の高い専門性やそれを可能とする長い徒弟期間そのものを否定する動きは大きくない。このことを改めて示したのが2011年の労働協約であったと言える。技術革新が絶え間なく進むアメリカにおけるこうした実態は、国際化、また急激な技術革新への対応を迫られている日本の職業訓練制度の今後を考えるうえで大きな示唆を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカの自動車産業における徒弟訓練にかかわって、おおむね当初の予定どおり、資料の収集と分析が進んでおり、最終年となる次年度には、その成果をまとめ公表することが可能な状態にあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年となる今年度は、アメリカにおける徒弟訓練について、引き続き資料の収集と分析をおこなうとともに、その成果をまとめ、公表の準備をおこなう。 なおアメリカの自動車産業では、ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)とUAW(全米自動車労組)は、徒弟訓練プログラムを円滑におこなうため、両者それぞれ折半出資の形でデトロイトに大規模な教育訓練センターを設置、運営している。名称はそれぞれ、UAW-GM人的資源センター(UAW-GM Center for Human Resources)、UAW-フォード・全国プログラムセンター(UAW-Ford National Program Center)、UAW-クライスラー全国訓練センター(UAW-Chrysler National Training Center)となっており、デトロイトあるいはその近郊に位置している。今年度は、資料収集とならんで、こうした施設での聞き取り調査を追求する。
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Research Products
(4 results)