2011 Fiscal Year Annual Research Report
新自由主義下における社会運動ユニオニズムの日仏比較
Project/Area Number |
21530578
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Research Institution | 財団法人労働科学研究所 |
Principal Investigator |
赤堀 正成 財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (60321676)
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Keywords | 労働組合 / 社会運動 / 労働市場 |
Research Abstract |
失業者をも動員し主体化させ「フランス的例外」と呼ばれた1996年11月の「社会運動総結集」以降,フランスの労働運動は,粘り強く地歩を維持拡大しようとし,時に間歇的に高揚することはありながらも,2007年のサルコジ政権以降,停滞を余儀なくされてきたように見える。 サルコジ大統領はフランスの労働市場の硬直性が雇用を阻んでいるとして労働市場のフレキシブル化に向けた改革を進めたが,失業者は08年から12年にかけて200万余から286万余に拡大するというように雇用はかえって縮小し,それに加えて有期契約(COD),派遣労働は増加した。フランスで非正規労働者の比率は16パーセント程度である(正規雇用でも労働時間が法定労働時間を下回る若干の労働者を含む)。 有期契約,派遣労働で従事する非正規労働者が正規労働者よりも脆弱な立場にあり,非正規労働者が労働組合に殆ど組織されていないのはフランスも日本と同様である。 しかし,フランス労働総同盟金属労連が支部をもつフランス自動車メーカーA社ではライン労働に3割台の非正規労働者を抱え,同時に非正規労働者を相対的に多く組織することに成功している。個人主義の浸透は日仏共通に見られる現象だが,同支部では労働組合を緊急避難的な「駆け込み寺」として機能させることから踏み出して,労働組合を労働者生活の不可欠の一要素とすべく取り組みが行われている(同支部活動家へのヒアリングによる)。企業別でないフランスでは労組の企業内活動にはかえって独自の困難が存在するが,職場における労働組合の存在意義を組合員相互のコミュニケイションの網の目を密にすることで高める,粘り強い古典的取り組みが功を奏している様子が窺えた。
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