2011 Fiscal Year Annual Research Report
成人期障害者虐待の発生メカニズムと予防・介入・ケアに関する研究
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21530580
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
宗澤 忠雄 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40219861)
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Keywords | 障害者虐待 / パワーバランス / 綾子関係延長 / 養護者の世代交代 / 葛藤回避性 / 強迫性 |
Research Abstract |
障害のある人の家族内虐待の発生メカニズムについて、さいたま市内で捕捉された虐待事例の中から50ケースを集中的に分析し、次のことが明らかとなった。(1)成年気におけるおよそ40歳前後をメルクマールとして、主たる養護者の世代交代に伴う家族のパワーバランスの構造的変化が重要な虐待の発生関連要因であること、(2)世代交代した主たる養護者(きょうだい等)の不安定雇用・経済的困窮が経済的虐待の背後にあること、(3)長期ケアを強いられる養護者の自立困難が障害のある人との関係に強迫性を生み出していること、(3)障害のある人の社会への参入と性をめぐる困難が子ども期の親子関係の延長と「親権の継続」のような錯覚を招いていること、(4)就労自立による社会への参入をめぐり、本人と家族の障害の受容が未成熟である問題は、家族内部への囲い込みと職場におけるいじめ・虐待の発生につながること。さらに、このような発生メカニズムについて、主に1980年代後半以降におけるわが国家族の構造変化と照らし合わせ、葛藤回避性と強迫性という二律背反的な家族関係がネグレクトとアビューズの諸類型を産出すること、家族関係につきまとう相互拘束性・密室性が親密さにつながらないまま暴力に転化しうることを理論的に総括した。 これらの成果をもとに、障害者虐待に関するサインリスト、リスクアセスメント・チェックシート、虐待防止チェックリストおよび虐待対応の実務マニュアル等を作成し、これらのすべてがさいたま市障害者相談支援指針の虐待対応部分に活用され、リスクアセスメント・チェックシートについては厚生労働省障害者虐待のマニュアルにも採用されるに至っている。
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Research Products
(1 results)