2010 Fiscal Year Annual Research Report
ケアの平等性確保を目的とする地域医療・介護のネットワーク構築に関する研究
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21530604
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
島津 望 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90306225)
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Keywords | 地域医療連携 / 急性期 / 回復期 / 維持期 / 地域連携パス |
Research Abstract |
熊本市が地域医療連携のモデルとして全国的に注目されるのは、脳卒中と大腿骨頸部骨折のそれであるが、医療および介護の地域連携システムとしては、両者の仕組みに大きな違いがある。平成22年度の研究は、その違いのメカニズムを分析して、他の地域が熊本のモデルを参考にする場合の参照可能性を明らかにした。 平成22年度は、脳卒中と大腿頸部骨折の2種類の連携組織が設計した地域連携パスの性質の違いに注目した。 脳卒中では、急性期→回復期→維持期と連携パスが流れるなかで急性期以外でも、連携パスの内容変更が可能になるように設計されている。そのように設計された理由は、脳卒中が治療やリハビリの経過により患者が必要とする医療や介護の内容がさまざまに変わる可能性を持つ疾患であることに起因する。したがって脳卒中の地域連携パスは、ケア(治療、リハビリ、介護)の消費場所の出来るだけ近くで、そのサービス内容が決定されるような仕組みになっている。これを流通システムの概念を用いれば、「延期型医療・介護流通システム」ということができる。 一方、大腿骨頸部骨折の連携パスは、急性期→回復期→維持期の流れの中で、できるだけ治療、リハビリ、介護の提供内容、提供基準がそれぞれの医療機関や介護事業所によって異ならないことが求められている。それは、大腿骨頸部骨折の疾患特性が、急性期病院における手術の段階で、ある程度、予後の見通しが立てやすいことに起因している。そのため、急性期(上流)でサービス内容の妥当性と信頼性が高く決定されれば、回復期(中流)→維持期(下流)とケア(および患者)が流れるなかで、効率よく、安定したサービスが流通することになる。これを流通システムの概念を用いていうならば、「投機型医療・介護サービス流通システム」ということが出来よう。 したがって、熊本モデルを他の地域に応用しようとする場合には、その疾患特性によって連携パスおよびそれを用いる連携組織のありかたを見極めて用いることが必要であり、表面的な模倣は厳に慎まなければならない。
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Research Products
(2 results)