2011 Fiscal Year Annual Research Report
大阪府知事退官後の林市藏の履歴と方面委員制度の関係についての歴史的研究
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21530618
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
小笠原 慶彰 京都光華女子大学, キャリア形成学部, 教授 (00204058)
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Keywords | 林市藏 / 方面委員 / 町内会・部落会 / 戦時下 / 被占領期 / 民生委員 |
Research Abstract |
戦時下の方面委員制度をめぐっては「町内会、隣組、部落常会、銃後奉公会等の隣保団体と方面委員との関係に付ては之が調整及連絡を慎重にし方面委員の職務遂行に遺憾なからしむること」となっていたが、厚生省社会局長・内務省地方局長連名で厚生省発社第165号「方面委員制度と部落会町内会の関係に関する依命通牒」が出された。その通牒では、「部落会、町内会等の幹部組織に方面委員を加はらしむる等適宜の方途に依り両者の有機的連絡を図る」となっていた。つまり当初は不明瞭な表現であったものが、通牒では方面委員を部落会・町内会の幹部として位置付けるよう明確に要求していた。この結果について林市藏は、自身のロビイング活動を念頭に「成行に任したならばかういふ風には行かなんだかも知れぬ」と評価したが、単なる自画自賛ではない。もっとも「最悪の『制度廃止』という結論は免れたものの、隣保組織との摩擦状態を依然残しながら、従前どおり戦時下における銃後組織として機能した」程度であったとも言える。 林市藏は、被占領期初期にはまだ隠然たる影響力を保っていたが、次第にその力を失い、いわば敬して遠ざける扱いになっていった。しかし、方面委員制度から初期民生委員制度への移行に際して、大阪府方面委員制度創設以来、林市藏がその形成と維持に精力を傾注した方面精神については、止揚することなく外形的に継承している。「方面委員制度は敗戦を境にその性格を一挙に更新したわけではない」とされる所以だろう。これは、民生委員制度史において「制度創設者としての林市藏」を無批判に受容していることに象徴される。さらに言えば、高度成長期以降に「『皇室の御聖慮』を奉戴する傾向が復活する」ことと無関係ではないのである。
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