Research Abstract |
人は人生の大半を特定の職業に就いて過ごす.したがって,就業は個人の人生にとって極めて大きな意味を持つが,特に2つの時期において重要である.一つは,学校卒業時における就職活動であり,そのときの職業選択,就職先選択が比較的長い将来までその個人の生活,人生を規定するので,慎重な意思決定支援が求められる.もう一つは,リストラ等による中高年離職者の再就職活動であり,若年層とは異なる問題を抱え,その就業活動支援は心理的に慎重な対応が求められる.特に中高年齢者は,長年の就業経験とは異なる職種への可能性を探ろうとしないなど,いわゆる心の硬さが再就職活動を困難にしていることが考えられる.そこで,心の硬さ尺度を構成して,心の硬さのどのような側面が就業活動のどのような側面を困難にしているかを明らかにして,適切なアドバイスを与えることによって,再就職の心理的支援を行うことを試みた.用いる手法としては,ラフ集合分析を用いた.Z.Pawlak(1982,1991)の提唱したラフ集合分析は,ある結果をもたらす原因の組合せを抽出するひとつの手法であり,職業に関して抱える若年層および中高年層の問題をもたらす心理的要因を把握する有力な手法であることが示されたからである.本年度は,若年層のデータとして,日本と韓国の大学生を対象に職業選択動機,心の硬さ尺度,就業活動意識に関する調査を行い,現在分析中である.また,中高年齢者に関する調査を行い,中高年齢者対象の新たな心の硬さ尺度を開発した.現在はこれらのデータについて,支援システムへの応用の基礎的知見を得ることを目的として,ラフ集合による分析を進めている.
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