2010 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における教える行為の発達と「心の理論」・実行機能の関連
Project/Area Number |
21530687
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Keywords | 教示行為 / 幼児期 / 実行機能 / 教える意図 |
Research Abstract |
幼児の教示行為について,社会的認知能力に関する発達心理学的な考察を深める上で重要なものとして注目されているが,幼児の教示行為の内実についてまだ十分に明らかにされていない。本研究では,日常保育場面の観察を通して,「知識・技能・規範性の不足している他者の誤った行為を,目標とする行為に修正する意図的行為」と広義に規定し直し,さらに年長児において「他者の知識・技能・規範性の向上を意図した教示行為」が出現してくることを明らかにした。そこから単に相手の行為を修正することを目的とするのではなく,相手が独力で課題遂行ができるように技能の向上を意図した教え方が可能になると予想された。 そこで,折り紙の仕方を大人(学習者)に教えるという場面において,制作途中で学習者が間違える状況を設定して,4,5歳児の教え方の変化を検討した。その結果,次の点が明らかになった。1)4歳児は無言で折り始める子どもが多いのに対して,5歳児は「まず三角折って」というように制作手順を筋道立てて説明する者が多かった。2)学習者がうまくできないために代行を依頼した際,学習者は単独でできるようになりたいことを実験者が強調しても4歳児は代行を継続した。他方,5歳児は実験者の介入によって,直接的な代行をやめて,学習者を主体にした教え方に変更することが多かった。3)そうした学習者主体の教え方をする者は,そうでない者に比べて実行機能の課題得点が高いことも示された。
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