2011 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の嘘-「心の理論」の指標としての発達的意味とその発現の規定要因の検討-
Project/Area Number |
21530689
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
瓜生 淑子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (20259469)
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Keywords | 心の理論 / 幼児期のウソ / 欺き行為 / 非第一子的性格要因 / 自我形成とウソ |
Research Abstract |
「心の理論」研究において、「アン=サリー課題」などの標準的な誤信念課題を使用した研究では、自他の心的世界の違いに気づき始めるのは4歳頃と言われてきた。瓜生(2007)は、子どもが親しみやすい新たな課題を工夫して与え(アンパンマン課題)、アンパンマンのためにバイキンマンを欺けるかどうかを検討した。その結果、4歳前後ではまだウソをつくこと自体が難しかったことから、「心の理論」獲得の時期が4歳以前に遡ることはできないと結論づけた。本研究では「心の理論」の年齢下限の論争に結論づけることを目的とした。昨年度は、養育者への質問紙調査(有効回答数149)を実施し、3歳後半と4歳前半では、子どもの嘘の出現に差が見られるという結果を得た。また、年小児・年中児の個別実験(上述のアンパンマン課題等による)の結果ともすりあわせて分析したが、年小児の参加児数が少なかったため、今年度、対象児を増やして検討した。その結果、ウソをつくことができた年小児は26.2%、年中児は50%であった。年小児と年中児との間に有意差があるとまでは言えなかった。また、前研究で示唆された出生順位の影響を想定して母親に尋ねた性格評定から、「自己主張の強さ」「のびやかさ」(これらは、予想通り、第一子より非第一子の方がその傾向が強いと評定されていた)の2つの因子が抽出されたので、この2つの性格得点や年齢等を説明変数として、アンパンマン課題の正答についてロジスティック解析を行ったところ、適合度指標等もよい結果が得られた。しかし、「のびやかさ」変数はマイナスの符合であり、むしろ「慎重さ」因子の正の影響と解釈される結果となった。「親への隠し事の経験あり」はプラスの符号であった。以上より、1)年小児、とくにおよそ4歳未満では、ウソの行使が難しいことが再確認された。2)性格要因の影響が仮説と逆になった点は、「慎重さ」が課題構造の理解という点で知的要因に近似した説明要因になったものと見られた。3)アンパンマン課題の正答率が年中児でもまだ高くなかったのは、前回は保育園児が多かったのが今回は幼稚園児のみを対象としたことの影響かもしれない。これらの解釈については、年長児のデータも加えてさらに検討したい。電気生理学的手法によってこの時期の子どものウソの際の緊張を捉えようとしたが、体動や実験時間が長時間に及ぶことなどから、全ての対象児には実施できなかった。
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Research Products
(2 results)