Research Abstract |
本研究の目的は,子どもと絵本(本)のかかわりに着目して,幼児期と小学校低学年期をつなぎ,絵本(読書)体験と「ことばの力」との関連を明らかにすることである.研究最終年度の11年度は,小学校3年生を対象に学校生活の観察と教師へのインタビュー,読書記録の分析から,学校と家庭での絵本(本)とのかかわりを調べるとともに,観察対象となった子どもの幼児期と小学校1~3年生の絵本とのかかわりを縦断的・総合的に分析し,幼児期から小学校低学年期の「ことばの力」について検討した.主要結果は以下の通りである. (1)絵本(本)のかかわり読書機会:小学校では,週1回の読書の時間の他,幼稚園同様,担任教師による読み聞かせ,課題が早く終わった子どもが本を読んで待つ,休憩時間に読むという絵本(本)とのかかわりが3年間を通して見られ,子どもが本とかかわる機会は幼小に共通していた.また子どもが読む本は,幼稚園,小学校の3年間を通して,教師が読み聞かせた本やそのシリーズが中心であり,子どもと本の間には,両者をつなぐ「人」の存在が重要であることが強調された.読書量:2,3年生では「読書マラソン」が導入されていたが,一部の子どもたちは競って本を手に取り,量の多寡に執心する様子が見られた.「読書マラソン」は本を読む「きっかけ」づくりとしては有効であるが,本の世界を楽しむなど読書の「質」の観点からは再考の必要が指摘された. (2)ことばの力=幼児期では家庭と園での絵本体験量と「ことばの力」には顕著な関連は見られなかったが,小学校では読書量の多い女児は概して「ことばの力」も高かった.ただし,2,3年生で優れて「ことばの力」が高いと評定された女児は,量(冊数)よりも質を重視した読み方をしており,読書記録や学校生活の観察から,自分で選んだ本(文章主体)をじっくり読む,自ら本の世界を楽しむ力が「ことばの力」と関係していると解釈された.
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