Research Abstract |
本研究では,メタ認知,特にモニタリングの意識的な成分と自動的な成分を分離するための潜在的誤答検出パラダイムを開発し,その有効性を検討する。いいかえると,本研究の目的は,潜在的誤答検出パラダイムを用いて,モニタリングの自動的成分と意識的成分の分離が可能であるかどうかを検討することであった。 H21年度の研究からは,誤答検出パラダイムにおいて意識的成分と自動的成分を有効に分離する適切な条件が見つからなかったので,H22年度は,視覚探索パラダイムを用いて,実験刺激セットに含まれる手がかりを操作し,それに潜在的に気づくかどうかについて検討した。その結果,課題遂行を自動的に行っている参加者だけだが,刺激セットの変化に気づいている可能性が示唆された。 これらの研究結果を受けて,H23年度は,閾下単純接触が刺激の学習時間配分に影響するのかどうかについて検討した。その結果,メタ認知モニタリングが正確であるグループにおいては,接触項目に短い学習時間を配分し,新規項目には多くの学習時間を配分した。この結果は,非意識的処理によってメタ認知コントロールが変わることを示しており,本研究の目的の一つであった,メタ認知モニタリングの自動的成分の発現を確認できたといってよいであろう。 加えて,誤答検出パラダイムを用いて,誤答を検出するためのメタ認知モニタリングが自動的に駆動されるかどうかについて検討した結果,誤答を含むような計算課題を処理する場合には,他の処理に遅延がみられ,メタ認知モニタリングが自動的に駆動する可能性が示された。 本年度の研究結果からは,これまで意識的な処理であると考えられてきたメタ認知モニタリングの自動的成分が存在すること,また,それらが実験的に抽出可能であることを明らかにしており,今後さらにメタ認知の意識性の問題について検討していく必要があるといえる。
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