2009 Fiscal Year Annual Research Report
教育が生み出したコホート差-ハンセン病元患者のキャリア発達を通して-
Project/Area Number |
21530698
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Research Institution | Sendai Shirayuri Women's College |
Principal Investigator |
沼山 博 Sendai Shirayuri Women's College, 人間学部, 准教授 (00285678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 武剋 仙台白百合女子大学, 人間学部, 非常勤講師 (90004085)
福島 朋子 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (10285687)
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Keywords | 教育系心理学 / 生涯発達心理学 / ハンセン病 / 生態学的分析 / コホート / 聞き取り調査 |
Research Abstract |
本研究は、ハンセン病回復者に存在すると考えられる、療養所入所年によるコホート差を、療養所内の教育制度やその方法・内容の変化に対応させながら、把握することを目的とした。そこでまず、1)回復者の行動的、意識的なコホート差を確認するために回復者に対する聞き取り調査を行った。また、2)療養所における教育の制度や方法・内容の経過を把握するために、療養所および関連機関に残存する資料を収集・分析した(関係者への聞き取りも行った)。平成21年度に新たに示唆された点は、それぞれ次の通りである。 1)に関して:入所年によるコホート差については、治療薬プロミンの使用が開始され、また戦後教育制度が療養所内で定着したと思われる1950年ごろを境とした2つのコホートに大別されると当初は予想されていた。しかし今回、特にキャリア(社会復帰)に対する意識や行動の点で、1950年以降の回復者の間にもコホート差があることが新たに示唆された。 2)に関して:1)との関連でいえば、教育制度という点では1950年ごろに療養所内で定着したと考えられるが、各校・教室で行われていた教育の方法や内容には当初差別的なものが含まれていたといわざるをえず、それが払拭されるのにはかなり時間がかかったようである。そのため、戦後教育世代の回復者でも、初期とその後とでは、受けた教育に実質的な違いがあることが示唆された。1)で述べた1950年以降の新たなコホート差はここに起因する可能性がある。 その他:以上のように、1950年以降の回復者の間にもコホート差があることが示唆されたがその境目はまだ明らかではない。この点に関し、2)で述べた教育の側面以外に手がかりになるのは、治療法の進歩である。ハンセン病の治療法が確立されるのは1960年代だといわれているが、それ以前に治療を受けた場合は再発や後遺症などが以後と異なっている可能性がある。これと受けた教育の違いが相まって、コホートが形成されているものと推測される。
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