2010 Fiscal Year Annual Research Report
メタTOMに基づくTOM行動の情報処理:大人はなぜ子どもの嘘を見抜けないのか
Project/Area Number |
21530711
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
菊野 春雄 大阪樟蔭女子大学, 児童学部, 教授 (00149551)
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Keywords | 心の理論 / 母親 / 子ども / 認識 / 情報処理 / 母性 / 育児不安 / 養育経験 |
Research Abstract |
本研究では、母親の心の理論(TOM)、母親が子どもの気持ちを推測するメカニズムについて検討した。特に、母親のどのような要因が子どもの気持ちの推測に影響するのかを調べようとした。要因としては、母親の母性、子どもの数など育児経験、育児不安を取り上げ、それらの要因と母親の心の理論との関係を調べた。これらの要因を分析することにより、母親の心の理論(TOM)のメカニズムを明らかにしようとした。まず、母親の母性と心の理論との関係の関係について調べた。母親の母性については、子どもの気持ちを推測する行動に影響することが認められた。母性愛の低い母親に比べ、母性愛の高い母親ほど子どもの心のサインを認識することが明らかになった。特に、その傾向は顔の静情報よりも顔の動情報で認められた。次に、養育した子どもの数と心の理論の関係について調べた。子ども数などの育児経験は、子どもの気持ちを推測する行動に影響することが認められなかった。すなわち、子どもの数が多いほど子どもの心の状態を推測することが認められなかった。さらに、母親の育児不安と心の理論との関係について調べた。育児不安は子どもの気持ちを推測する行動に影響することが認められ、育児不安の高い母親の方が子どもの嘘を認識することが認められた。母親は子どもの目、表情、話し方を手がかりとして子どもの嘘を認識することが認められた。これらの結果は、TOMを活性化するメカニズムに子どもの数のような育児経験よりも、母性や不安のように母親の心理的要因が重要であることを示唆している。
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