Research Abstract |
本研究は,感情労働における感情処理プロセスの解明ならびに,感情労働が労働者に及ぼすネガティブな影響の軽減方略の検討を行うことを目的として実施している。今年度は,昨年度中に明らかになった"副次的感情(感情労働に伴って,帰宅後や休日等に生じる二次的な感情経験)"がバーンアウトに大きな影響を及ぼすという知見を踏まえ,この副次的感情に着目しながら,筆記開示方略を用いた感情労働プロセスへの介入を実際に試みることを主眼として,研究を行った。 まず,副次的感情による中期的・因果的影響について,パネル調査の第2回目調査を実施した(第1回目調査は昨年度中に実施済み)。その結果,副次的感情は,6か月という期間をおいてもなお,バーンアウトに対して有意な影響力を持っていることが明らかになった。この結果をもとに,副次的感情を一定期間にわたって開示することによってバーンアウトの低減を試みる,実験的手続きを実施した。具体的には,実験参加者が所有する携帯電話のEメール機能を活用し,副次的感情を3週間(21日間)にわたって開示する手続きを行った(実験群)。この実験群に対し,食事内容や睡眠時間等の日常生活習慣を開示した統制開示群,何も開示を行わない統制無開示群との比較を行った結果,副次的感情の開示を行った実験群においてのみ,バーンアウト得点が有意に低下する効果が確認された。したがって,本研究から,感情労働プロセスへの介入にあたっては,副次的感情に着目することが望まれること,筆記開示の応用が介入方略として一定の有効性を持つことが示唆された。これらの結果については,昨年度実施された研究結果とあわせて,日本感情心理学会第18回大会(広島大学)および日本心理学会第74回大会(大阪大学)において,ポスター発表を行った。
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