2009 Fiscal Year Annual Research Report
母子家庭で育った青年のアイデンティティ形成-別れて暮らす父親との関わりを通して
Project/Area Number |
21530714
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
堀田 香織 Saitama University, 教育学部, 教授 (10251430)
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Keywords | 母子家庭 / 離婚 / 父親 / 父子関係 / 語り |
Research Abstract |
本研究は、母子家庭で養育された子どもが青年に至るまでのアイデンティティ形成に、別れて暮らす父親との関係性がどのような影響を与えるかを検討するものである。中でも今年度は離婚によって母子家庭となった家庭で母親によって育てられた子どもと、別れて暮らす父親との関係を取り上げた。分析したのは、離婚の記憶の残っている幼児期から、思春期までに両親が離婚した経験を持つ青年、離婚後学童期から思春期までの子どもを母子家庭で養育する母親との面接データである。分析の視点として浮かび上がったのは「離婚に至るまでの父子関係はどのようなものであったか」「離婚の理由がどのように子どもに伝えられているか」「離婚後父親がどのように子どもに関わったか」「母親と父親と子どもの三者間の力動」などである。結果として、子どもがまだ母親から心理的に独立していない時期に両親が離婚した多くの離婚家庭において、離婚は父親が原因であるとする物語が生成され、父親を非とすることで母子家庭内の母子の結びつきが強められていた。思春期になると、同居する母親に対して反抗的な態度が強くなり、母子の心理的距離が遠くなる。一方で、多くの離婚家庭において別れて暮らす父親が関わりを持つのは学童期までで、思春期には父親との距離を置き、むしろ仲間関係に対象がシフトしている。青年期になると、子どもたちはそれまで父親を非としてきた物語を再度再構成し、両親の関係性を客観的に語る物語を生成する。またこの時期父親と適切な関わりを持つと、母親からの情報で形作られていた父親像が再構成される。臨床的に困難であると考えられたのは、離婚による母親の傷つきが深く、母子の関係が孤立・密着し、父親のネガティブな像が離婚後も母子家庭の母子を支配し続けるような場合、反対に思春期になり同居している親に反抗し母親を価値下げし、一方で別れて暮らす父親が理想化している場合があった。
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Research Products
(1 results)